2014年1月アーカイブ

環境的なリスクファクター(2)

 
(前の記事からの続き)

o家族と仲間の影響
 パーソナリティは全て、育った環境によって形作られます。
 私たちが皆「正常な範囲内の機能不全」の中で育ってきてもいます。

 BPD発症のリスクには次のようなものがあります。
・感情的,身体的,性的虐待
・効果的でない(とBPD本人が思っている)育て方
・無秩序な家庭状況
・親と子供の気質の不適合
・親,または親の関心の喪失

 これは99%の家族に当てはまるかもしれません。
 でも自らを咎めないでください。

 BPDの人は対人的なやり取りを誤解したり、間違って記憶したりするかもしれません。
 強い見捨てられ不安のため、友人関係をより多く求め、期待する可能性があります。

oBPDの一因としての「非承認的な環境」
 BPDの原因に関する「生物社会的」モデルがあります。
 BPDの人は生まれつきストレスに激しく反応し、感情的な頂点は際立っています。
 落ち着くまでに普通より長い時間がかかります。

 感情的に脆弱な子供が「非承認的な環境」で育てられると、BPDを発症するといいます。
 非承認的な環境とは次のようなものです。

・養育者が、子供の感情や経験を間違っていると言う
・養育者が、子供の欠点を批判する

 子供は自分の直感的な反応を信用しなくなり、自分がどう感じるべきか、他者に目を向けるようになります。

o親と子供の適合不良
 リスクファクターのひとつが、生物学的に脆弱な子供と、子供の要求を負担に感じる養育者との不適合です。
 家族が危機的状況にある場合,親が子供と過ごせる時間が制限されている場合などがあります。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー(星和書店)
 〈監訳:遊佐安一郎〉より

文責・稲本
 

環境的なリスクファクター(1)

 
 環境的なリスクファクターには、虐待,家族と仲間,非承認的な環境,親と子供の不適合があります。

o虐待:神話と現実
 BPDの人の75%が虐待の経験があると言われています。
 しかしそれには幾つかの問題があります。

 まず、虐待がBPDの原因なら、BPDの人の4人に一人が虐待されていないのは何故でしょう。

 次に、相関関係は必ずしも因果関係ではありません。
 虐待,離別,ひどい子育てを受けた多くの人は、BPDを発症せず、BPDの人のなかには、これらのリスクファクターのどれも経験していない人もいるのです。

 また75%という数字は、成人患者の自己報告に基づいていますが、BPDは知覚や論理に障害があるものです。
 虐待という言葉の曖昧さやデータ収集の限界もあります。
 75%という統計は絶対的なものではありません。

 生物学的にBPDの要因がある人は、ほとんどの子供が耐えている侮辱,批判,懲罰に過敏です。
 そして、親が扱いにくい子供には批判や懲罰が多くなり、のちに虐待的として思い出される可能性があります。

 BPDの子供を持つ親のサポートグループ「NUTS」では、虐待,ネグレクト,トラウマが問題の家族は、ほとんどないといいます。
 虐待的な親は恐らくグループに参加しないのでしょう。
 でも虐待が関係なくても、BPDに取り組んでいる家族が多くいるのです。

(次の記事に続く)
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

生物学的なリスクファクター(2)

 
(前の記事からの続き)

o感情脳
 扁桃体は辺縁系の中にあり、感情の中心です。
 大脳皮質が客観的なことを伝えるのに対して、扁桃体は感情を生み出すのを助けます。
 大脳皮質によって同じ事実が伝えられても、人によって感じることが異なるわけです。

 扁桃体は感情の強さもコントロールしており、人より感じ方が変わります。
 感情は理屈以上に、私たちが考えるよりずっと大きな影響力を持っています。

oティーンエイジャーの物理的な脳
 判断を下したり、衝動的な行動をコントロールする脳の部分が、10代ではまだ発達途上にあり、25歳頃までは完全に成熟しません。

 若者は感情について話すのが難しいのです。
 人の顔を見て感情を判断するとき、大人が前頭葉(脳の論理的部分)を使うのに対して、若者は扁桃体を使っています。

o化学的な脳
 脳内には、ニューロンが枝のように複雑に入り組んで、神経伝達物質という化学的メッセージを受け取っています。

 およそ50の神経伝達物質が発見されています。
 例えば、ノルエピネフリンは記憶・闘争・逃走反応に関係し、ドーパミンは報酬の感覚,セロトニンは衝動性と気分に関係しています。

 神経伝達物質の量や、変化の速さに問題があると、ニューロンが互いに「話をする」ことが困難になる可能性があります。
 ドーパミンのレベルが低いとパーキンソン病を生じさせ、セロトニンはうつ病,慢性疲労,引きこもりに関連し、ノルエピネフリンは抑制のきかないパニック発作に関連しています。

 神経伝達物質の問題は、BPDの誤った思考(認知能力),感情の調節困難,衝動性に関係しています。

o遺伝子と脳
 BPDそのものが受け継がれることはありません。
 受け継がれるのは、この障害に関わる2つから4つの特徴です。
 両親がBPDでなくても、以下のような、BPDの特徴につながりうる遺伝子を持っているかもしれません。

・攻撃性
・抑うつ
・興奮性
・怒りやすさ
・衝動性
・依存症になりやすい
・認知(思考,論理)障害

 遺伝子は種子であり、日光や水,肥料などの環境に反応して育つものが、パーソナリティと考えられます。
 遺伝子と環境の両方が影響力を持っているのです。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

生物学的なリスクファクター(1)

 
 BPDの原因はひとつではありません。
 発症の可能性を高めるリスクファクター(危険因子)が、いくつか存在するのです。
 リスクファクターの数が多ければ多いほど、発症の危険性が高まります。

 生物学的要因と環境的要因の、2種類のリスクファクターがあります。
 どちらか一方が優勢なのではなく、両方が影響しています。

 生物学的要因が多く存在する場合、BPDを発症させる環境的側面はわずかです。
 生物学的要因が少なければ、環境的要因が多くないとBPDにはなりません。

○生物学的なリスクファクター
 生物学的な要因は、物理的な脳,脳化学,遺伝子です。
 それらは互いに絡み合っていて、分離するのは、ケーキの中の砂糖と卵と小麦粉を分けるのと同じくらい大変です。

 脳は、考え方,感じ方,行動の仕方をコントロールしています。
 脳内の生物学的障害が、BPDの人の歪んだ思考,感情,行動に影響するのです。
 このことが充分に理解されれば、愛するBPDの人に共感したり、その行動を個人的なものと見ないようにすることが、より容易になるでしょう。

 脳は3段階の構造になっています。
 原始脳,辺縁系,大脳皮質です。
 原始脳は、呼吸,消化,心拍など、生命を保つ機能をコントロールしています。
 辺縁系には扁桃体(へんとうたい)があり、感情を支配しています。(感情脳)
 大脳皮質は思考脳です。

o物理的な脳
 脳みそがパーソナリティを形成する役割を担っているのは、100年以上前から知られています。
 19世紀中頃、ある男性が爆発事故で脳に鉄の棒が突き刺さり、頭蓋骨を貫通してしまいました。
 命は取り留めましたが、彼はパーソナリティが完全に変わってしまいました。

 事故の前、彼は人格者で尊敬されていましたが、事故後は、発作的で不遜で品のない人間になってしまったのです。
 大脳皮質の構造に損傷を与えたことが分かりました。

 BPDの発症は、脳の「海馬」に関係があります。
 海馬は、記憶と、感情に関連しており、海馬の問題が、BPDの極端な言動を説明できるかもしれません。

(次の記事に続く)
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

家族の力学

 
 家族のモデルに、「カープマン・トライアングル」と呼ばれるものがあります。
 この関係性は全ての家族に起こり、次の役割があります。

・「被害者」
・被害者をいじめる「迫害者」
・飛び込みで被害者を救う「救済者」

 家族は口論の際、お互いを負かそうと、自分が被害者だと主張し、相手に迫害者のレッテルを突きつけようとします。
 役割は常に入れ替わります。

 例えば、兄弟喧嘩で母親が弟の肩を持つと、母親は弟にとっては救済者ですが、兄にとっては新たな迫害者です。
 そこで兄が引き下がると、兄は事実上弟の救済者を演じることになります。
 でも気持ちは被害者のままです。

 カープマン・トライアングルの綱引きは、問題解決を阻止し、混乱と苦悩をもたらします。
 誰が勝っても両者が惨めになり、これが問題を二重にします。
 終わりのない争いと、意見の相違です。

 BPDの人が参加していると、この力学がより強く、危険なものになります。
 さらに、BPDの思考,感情,行動の機能障害は、中立の立場を見いだすのを不可能にします。

 自分が被害者だと思っても、BPDの人はノン・ボーダーの人を被害者にはさせません。
 しかし、BPDの人との関わり方を変えることはできませんが、皆さんが振り回されないよう選択することはできるのです。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー(星和書店)
 〈監訳:遊佐安一郎〉より

文責・稲本
 

5つの機能不全

 
○「あなたのせいよ」
 BPDの人は、他者を責めることによって、自分の行動の責任を回避しようとします。
 自分に欠陥があることを認めるのを避けるのです。
 しかし、この戦略は他者を遠ざけ、結局羞恥心を和らげることにはなりません。

○「どちらに転んでも勝ち目のない状況」
 何かをしてもしなくても批難されるとき、勝ち目のないシナリオの中にいるようなものです。

 あるノン・ボーダーの人の例があります。
「君が落ち込んでいて、僕が慰めようとすると、君は怒って僕を追いやり、ひどいダンマリ作戦だ。
 同じ状況で、一人にしてあげようとすると、また怒りとダンマリ作戦!」

○「投影」
 自分の良くない特徴や言動についての嫌な思いを、他人のせいにすることで避けようとします。
 「投影」呼ばれる、よくある防衛機制です。
 BPDの人はこの点でも極端です。

○「大嫌い-でも行かないで」
 BPDの人は、人と親しくなりすぎると飲み込まれてしまうように感じます。
 すると彼らは、自分を相手から遠ざけ、コントロールを避けようとします。
 そうすると無視されているように感じたり、見捨てられたようにさえ感じます。
 また親しくなろうとして、同じことが繰り返されます。

○「あなたを試す」
 BPDの人は、人が彼らを本当に愛していて、見捨てたりしないとは信じません。
 愛する人がいずれ別れたり、見捨てたりすることが分かっていて、それがいつ起こるか分からないと、人生はストレスの多いものになります。

 彼らは、相手が自分の行動に耐えてくれるか見ようとします。
 耐えてくれたら、次は段階を上げて、それも受け入れてくれるかを見ます。

 ノン・ボーダーの人がテストに合格すると、BPDの人は相手が正気なのか、疑問を感じ始めます。
「どうしてこんな虐待を受け入れるのだろう? 
 どこかおかしいに違いない」と考えるのです。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

 
○拒絶に対する敏感さ

 BPDの人は抑うつ的で、自尊心の低さに苦しんでおり、拒絶されると信じ込んでいます。
 常に自分の周りに目を配り、排斥のサインを探し、ごく小さいことに意図的な侮辱を見て取ります。
 拒絶されていると確信すると、自分なりの理由を考え、敵対的に反応します。

 あるBPDの人は次のように述べています。
「しょっちゅうパートナーの顔色を伺って、『怒ってるの?』と話しかけてしまいます。
 そしてパートナーがうるさがり、本当に怒りだすまでそうするのです。

 パートナーが嫌気がさしているのは、事実のように思えます。
 そして僕は恐怖で一杯になるのです。」

○衝動的な攻撃性(ボーダー・ライオン)
 衝動的な攻撃性とは、フラストレーションと組になっていて、拒絶や見捨てられの恐れで生じる、BPDの中核的な特徴です。

・言語的攻撃性,身体的攻撃性で、自他を傷つけるのが目的
・外側(怒りの爆発,物に当たる,他者への暴力)、内側(自殺企図,自傷)に向けられる
・衝動的で、行動の結果を考えていない
・不安定な感情,衝動性,自殺思考など、いくつかのBPDの特徴とつながる
・論理的な脳と感情的な脳の「綱引き」の結果、論理的な面が負ける
・遺伝的でありうる
・間欠性爆発性障害など、衝動抑制障害の構成要素

 「ボーダー・ライオン」は、圧倒的な感情を、檻に入っていない猛獣に例えたものです。
 「見捨てられた,虐待された子供」を保護することもします。

 ボーダー・ライオンは、信頼できる関係を築くうえで最大の障壁になります。
 でも、適切な治療で飼い馴らすことができるのです。

 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

感情的知性の低さ

 
 賢さは、IQに加えて、「感情的知性」(EI:emotional intelligence)があります。
 自分や人の感情を観察し、思考と行動を導くことです。

 感情的知性は、BPDの人がどんな知的でも他者の気持ちを感じ取れない理由を、説明するのに役立ちます。
 「EQ-こころの知能指数」(講談社)では、感情的知性を5つに分類しています。
・自分の感情を知る
・感情を管理する
・自分自身を動機づける
・他者の感情を認識する
・人間関係に対処する

《自分の感情を知る》
 BPDの人のなかには、自分の感情を的確に述べられる人もいますが、その他の人は問題を抱えています。
 彼らの感情は素早くシフトします。

 自分の感情と他者の感情を分けることが難しい人もいます。
 他者の困難に巻き込まれる人は、アイデンティティに苦しんでいます。

《感情を管理する》
 「感情調節困難」が、BPDの顕著な特徴であるのはいうまでもありません。

《自分自身を動機づける/衝動性》
 動機は、衝動的行動をコントロールする能力に関係します。
 衝動のコントロールは、あらゆる感情のコントロールの根本にあります。
 感情は衝動的な行動に繋がるからです。

《他者の感情を認識する》
 BPDの人は、他者の感情を読み違えることがあります。
 例えば、怒っている人を見て、怒りが自分に向けられていると考えます。
 そして、見捨てられる,傷つけられると思いすぎてしまうのです。

 BPDの人は、他者にも要求があることを簡単に忘れてしまいます。
 それは、BPDの親とノン・ボーダーの子供や、恋愛関係において最も問題になります。

《人間関係に対処する》
 感情を管理できることは、親密な関係を持つうえで必要です。
 感情の自己コントロールには、自己認識と、他者の善悪両面を見ること,他者の欲求に気付くことも必要です。

 私たちは、安心できる人の傍にいたいものです。
 自分の傷つきやすさも見せられるほど居心地がいいとき、信頼が生まれます。
 次のような人が信頼されます。

・ありのままに受け入れてくれる
・傷つけたり、ばかにしたりしない
・限界を尊重してくれる
・正直で公正である
・気持ちや考えを、反撃せずに言わせてくれる

 BPDはこれらが成り立ちません。
 決定的な悲劇は、BPDのために親密さへの渇望が生じるのに、まさにこのBPDによって、その関係を築く能力が奪われているということです。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

子供のような特徴と防衛機制

 
 人間関係を複雑で困難なものにする、BPDの4つの特徴があります。

1.子供のような特徴と防衛機制
2.感情的知性の低さ
3.拒絶に対する敏感さ
4.衝動的な攻撃性
 

○子供のような特徴
 BPDの人との話し合いは、小さな子供と口論しているのと同じです。
 BPDの人は社会的,職業的に成熟して見えても、内側では子供のように心細く、不安で、世話を必要としています。

《形態もしくは感情の状態》
 BPDの人は4つの子供時代の形態に分類できます。
 見捨てられた,虐待された子供、怒った,衝動的な子供、懲罰的な親、よそよそしい保護者です。

・見捨てられた,あるいは虐待された子供
 孤独で、不完全で、恐れ、不安で、愛されず、弱く、悲観的に感じています。
 低機能のBPDの人(マリリン・モンローやダイアナ妃)に見られる特質です。

・怒った,衝動的な子供
 激昂し、苛立っており、我慢ができません。
 中核的な要求が満たされておらず、自分のことに夢中で、願望を行動に移します。

・懲罰的な親
 要求や感情を表現したり、間違えた子供に罰を与えます。
 結果としてBPDの人は、自己嫌悪や自己否定で一杯になり、自傷する可能性もあります。

・よそよそしい保護者
 要求や感情を退けたり、他者から離れたりすることで、感情的に自分を保護します。
 その結果が、空虚感と倦怠感です。
 物質乱用や過食,自傷につながります。

《原始的防衛機制》
 嫌な思考や感情から自分を保護する心理的な戦略です。
 一般的なのは「合理化」で、都合のよい理由を作り上げます。

 原始的防衛機制には、スプリッティング,解離,否認,行動化があります。
 BPDの人は大人になっても、原始的防衛機制を使い続けます。

 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

BPDの行動は意図的ではない

 BPDをもつ人との関係を理解しましょう。

 BPDの人とノン・ボーダーの人の関係(心理学的な相互作用)は、どの人たちもびっくりするほど類似しています。
 人をびくびく怯えて生活させたり、行き詰まりを感じ続けさせたりするような、機能不全の相互作用のパターンです。

○ほとんどのBPDをもつ人の行動はわざとしているのではありません
 家族はBPDの人の行動を個人的に捉えてしまいます。
 それは感じる必要のない苦痛につながります。
 なぜなら、BPDの行動は意図的ではないからです。

oBPD色の眼鏡で世界を見ましょう
 BPDの人に感情移入をしてみる、2ヶ月間の演習をします。
 ノートを用意してください。

第1週:小学生時代から始めて、自分が人前で恥ずかしい思いをしたことを全て思い出してください。

第2週:家族が皆さんに酷い苦痛を与えたことを全て思い起こします。
 次に、愛情ある関係全てについて、同じことを行なってみましょう。

第3週:誰かに激怒したことを書き出してください。

第4週:死にたい気持ちになったことはありますか? 
 生活の中でコントロールできないものはありますか? 
 自分の嫌いな部分を全てリストにしてください。

第5週:相手を傷つけたことを全て考えてみましょう。

第6週:ノートのそれぞれのでき事に対して、その責めを受けるべき誰か他の人や物事を見つけましょう。
 高機能BPDの人と同じようにします。
 「私のせいではなかった。相手のせいだった」と繰り返し言ってみます。
 その言葉に安堵を感じましょう。

 自分がそうしなければならなかったのは、その人のせいということにしましょう。
 おかしな人に対処しなければならない代償として、自分にご褒美をあげましょう。

第7週:今度は低機能BPDの人がするようにします。
 全ての辛いでき事を自分のせいにします。
 あなたには価値がなく、大事にされるに値しなかったと考えましょう。

第8週:全てのメモを頭の中で同等に並べます。
 自分を責めることと人を責めることなど、互いに矛盾することでもやってみましょう。
(実際はこれを特に)
 行なうのが困難になるかもしれませんが、自由に泣いてください。

o演習の解釈
 四六時中この感情の混乱を抱えて暮らしていることを想像します。
 人から批判されたり、嫌われたり、物事がうまくいかない状況に身を置いてみます。

 傷つけられたと思い込むときの苦痛の一部は、自分を愛してくれるはずの人が、何故自分を傷つけたいのかと考えることによるものです。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

併存障害(2)

・自己愛性パーソナリティ障害
 高機能のBPDの人が自己愛性パーソナリティ障害の特徴をもつのは、非常によくあることです。
 男性では特にそうです。

 BPDの人は愛情への貪欲な要求を満たすために、他者との親密な関係に頼ります。  一方、自己愛性パーソナリティ障害の人は、お世辞や特別待遇を求めますが、本当の人間関係を必要としません。
 彼らは他者への共感を持たず、他者は要求を満たすための存在なのです。

 自己愛性パーソナリティ障害の人はチャーミングで自信があり、傲慢な印象を与えるかもしれません。
 しかし誇大なイメージの下には、極めて低い自尊心と、根底に空虚感や無価値感をもつ不安な人が隠れています。
 傲慢なイメージは、弱みや欠点を知られないための方法なのです。

 彼らにとって人間関係が重要だと認めることは、欠乏感に直面させることになります。
 すると、耐えられないほどの空虚感,嫉妬,激怒を生じさせます。

・双極性障害
 BPDの人と双極性障害は、互いに間違えられることが多いものです。
 双極性障害は劇的な気分変動を起こします。
 過剰にハイな気分やイライラから、悲しみ,絶望に変わり、また前の状態に戻ります。

 ひとつの周期は、5年だったり、3ヶ月だったり、急速後退型双極性障害というタイプはより急速に循環します。
 しかしBPDよりずっと遅いと言えます。

 BPDと双極性障害にはふたつの主な違いがあります。
1.BPDの周期はずっと早く、1日に数回のことが多い
2.BPDの人の気分は、生活上のでき事に左右される

 双極性障害が、あらゆるものを含む躁病と大うつ病の間で変動するのに対し、BPDの典型的な気分変動は、より特定されていると言います。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

併存障害(1)

○併存障害
 BPDの人のほとんどは、脳に別の障害がある「併存障害」を抱えています。
 うつ病が最も一般的で、物質乱用,摂食障害,自己愛性パーソナリティ障害,双極性障害,演技性パーソナリティ障害があります。

・うつ病
 うつ病はBPDの人のほとんどに広まっており、治療を困難にしています。
 圧倒的な悲哀,見捨てられ不安,強い罪悪感,無力感,絶望感,無価値感があります。

・物質乱用
 物質使用障害の人の約3分の1がBPDでもあります。
 逆にBPDの人の半数以上が物質使用障害をもっています。

 物質乱用と依存は、BPDの定義の一部でもあります。
(自己にダメージを与える衝動性)
 一時的に感情的な痛みを和らげようとします。

 物質使用障害の専門家は、BPDが根本要因だと気付かないことがあります。

 BPDの人が物質を乱用すると、薬物療法と心理療法の両方の有効性が著しく低下します。
 BPDに対処する前に、まず物質依存の治療をすべきだと言われます。

・摂食障害
 物質乱用が男性に多いのに対して、女性により多く見られます。
 危険なほど自分を飢えさせますが、それは自傷の代替であり、コントロールを得るための手段とも考えられています。

 無茶食いのあと、嘔吐や下剤などで食べたものを出そうとします。
 これが長期にわたると、胃が破裂したり、歯がなくなったり、死に及んだりします。

・演技性パーソナリティ障害
 演技性パーソナリティ障害は、著しい自己中心性,誘惑的な行動,度を超えた感情表出,過剰な注目への要求などがあります。
 魅力を振りまき、外見で注意を引いたりします。
 自分の欲しいものを得られなくなるまでは。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

青少年と年配者のBPD

○子供と青年におけるBPD
 症状が1年以上ある場合、児童期でもBPDの診断は可能と言われます。
 青年期のBPDの症状は、成人のBPDのそれと異なりません。

 臨床家は、環境がどのように非承認的かを認識している必要があります。
 例えば、BPDの子供の世界観との間のギャップを埋めることが重要です。
 それは、家族療法のセラピストと取り組むことで行なわれます。

○BPDをもつ年配者
 BPDが加齢によって落ち着くことを示す研究がありますが、決定的なものではありません。
 さらに多くの研究が必要です。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

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