2014年3月アーカイブ

援助を求める動機づけ(2)

 (前の記事からの続き)

o人生を変えるセラピーは重大な関わりを必要とする
 いつも人のせいにしてきたことの責任を取り、考え方や感じ方,行動を変えるのは難しいことです。
 自分なりのペースとやり方で、自分の真実を見つけなければなりません。

o真剣にセラピーを受けるモチベーションとしてのどん底
 BPDの人のなかには、どん底に突き当たってからでないと、援助が必要だと認めない人がいます。
 BPDの人が真実に直面するためには、何かを失いたくないなどの、重大な変化が必要です。
 変化への恐れは内因性のもので、その衝撃は圧倒的なものです。

 セラピーは、BPDの人の旅であって、ノン・ボーダーの人の旅ではありません。
 簡単なルールはありません。
 自己全体のためのリハビリです。

 ノン・ボーダーの人は治療について中立的な立場を取り、BPDの人の判断や訴えに、同意も不同意もしないようにします。

 ただ進みすぎるのは、BPDの人を恐れさせる可能性があります。
 彼らは回復し始めると、皆さんからの支援を失うかもしれないと考えます。
 励まし、前向きであってほしいのですが、このことにも敏感であってください。

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 
 

 

援助を求める動機づけ(1)

   ノン・ボーダーの人は、BPDの人をセラピストに会わせようと、次のような多くの努力をします。
 操作,買収,泣く,相手の欠点を指摘,論理的に説明,懇願,自己啓発書を置いておく。
 その結果は目に見えています。

ステージ1
 BPDの人は、セラピストが必要なのはノン・ボーダーの人のほうだと言います。
 ノン・ボーダーの人のことを、虐待的で、理不尽で、支配的だと批難します。

ステージ2
 ノン・ボーダーの人は必死になって、「セラピストに会いに行かなければ出ていく」のような最後通告をしたりします。
 セラピストが説得してくれるだろうと期待するのです。

ステージ3
 ノン・ボーダーの人が脅しを実行するのではないかと恐れ、BPDの人はセラピストに会いにいきます。
 しかしセラピーは暗礁に乗り上げます。
 援助を得ようとしない人を助けることはできないからです。

ステージ4
 BPDの人はセラピーをやめる理由を探します。
 これは、セラピストの腕がよく、BPDの人の被害者意識を強化させる代わりに、中核的問題に焦点を当てる場合です。

 しかしセラピストが患者を受け入れすぎると、歪んだ考えを強化してしまい、事態を悪化させてしまうかもしれません。

ステージ5
 やがてノン・ボーダーの人は、人に何かを「させる」ことはできないということに気付きます。
 時には、長いプロセスが繰り返されます。

ステージ6
 数ヶ月から数年後、ノン・ボーダーの人は、相手を変えようとする試みが、さらなる苦痛を引き起こしただけだと気付きます。

(次の記事に続く)

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 
 

 

専門家の援助を求める

  
 BPDの有効な治療を探すのは、費用もかかり、感情的にも苦しく、フラストレーションとなります。
 BPD治療の経験に富んだ臨床家への需要は、供給を大きく上回っています。
 適切な臨床家を探すのは、試行錯誤のプロセスです。

○セラピストを見つけるのが難しい理由
 セラピストがBPD患者に否定的な態度を示す第一の理由は、BPDの治療が非常に困難なことです。
 第二に、BPDを治療することは、セラピストにとって感情的にも疲れるからです。

o専門家にとっても難しいBPD
 BPDは、人の考え,感じ方,行動のプロセスを変えてしまいます。
 これ以上に根本的なものはないでしょう。

 低機能のBPDの人はしばしば、どうせだめだろうという態度でセラピーにやってきます。
 治療のジレンマのひとつは、BPDの人が常に危機的状況にあるため、それに対処しなければならず、深い問題を扱う時間が作りにくいということです。

 熟達していないセラピストは、自分自身の境界をなかなか守れません。
 問題が起こったとき、過度に批判的になったり、見捨てるかのように思わせたりしてしまいます。

o治療者も感情的にさせられる
 専門家も人間です。
 激怒や批難に対し、本能的に反応するものです。
 頭では分かっていてもです。
 それは患者にとって有害なことです。

 クライアントが良くならないと、それをクライアントのせいにしたり、クライアントの態度を「操作」として考えたくなります。

 BPDの人も、よくなりたいというより、ただ怒りを表現したいだけだったりします。
 治療者がうんざりするのを、BPDの人自身感じています。

 逆に、BPDの人がセラピストを理想化したり、セラピストを自分の中心に据えてしまったりするのも、恐ろしいことです。

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

 

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