2014年4月アーカイブ

パワーツール1:自分自身を大切にする

 BPDの人によるストレスは、身体的・精神的問題を引き起こします。

・怒りの爆発
・寝つけない,すぐ目が覚める
・涙にくれる
・集中できない
・ビクビクする
・生活全般に興味がなくなる
・感情が麻痺する
・体重の増加や減少
・絶望や羞恥心
・疲れや弱さを感じる
・原因不明の体調不良
・セックスへの無関心
・うつ,パニック発作,その他

 孤立してしまうと、社会的な援助が受けられなくなります。
 パワーツール1は、他の全てのパワーツールの基盤となります。
 皆さんがベストの状態でないと、パワーツールは安全・効果的に作用しません。

 皆さん自身に自尊心がなければ、BPDの人が自尊心を高める助けをできません。
 自分が怒りを制御できていないのに、「愛してる」と言っても伝わらないでしょう。
 BPDの人を喜ばせようと頑張りすぎると、自分を見失う恐れがあります。

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

パワーツール

 これから5つのパワーツールを紹介していきます。
 自分の考えをまとめたり、スキルを身に付けるのに役立ちます。

パワーツール1:自分自身を大切にする
パワーツール2:行き詰まり感の原因を明らかにする
パワーツール3:理解されるように伝える
パワーツール4:愛情をもって境界を設ける
パワーツール5:適切な行動を強化する

 自分の長所を利用しながら、順を追って習得することが大切です。
 BPDの人がどう反応するかは分かりません。
 状況に合わせて改良すべきでしょう。

 カウンセリングを求めてください。
 皆さんとBPDの人の安全を第一に考えてください。

 次のようなことが期待できます。
・ストレスが減って、疲れが取れる
・自信が付き、自分が何を必要としているかはっきりする
・どこで頑張るかが分かる
・攻撃的な会話から抜け出せる
・問題解決のスキルが向上する
・BPDの人を援助する方法が身に付く
・自信をもって境界を設けることができる

 完璧を求めないでください。
 練習するに連れて、自然と上手になります。
 苦しいと感じたら、それは頑張りすぎです。
 自分のペースで行なってください。

 BPDの人との関係は、段階を踏んでいきます。
 まずBPDを余り知らない段階では、困惑します。
 外側に向かう段階では、BPDの人を変えようとするでしょう。
 内側に向かう段階では、内面に目を向けます。
 意思決定・解決の段階は、決定したことを実行し、変化するときです。

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

 

セラピストの考え

○セラピーに対して

 皆さんはセラピストと話すとき、質問するのが失礼でないかと考えるかもしれません。
 しかしセラピストが寛大でなければ、適切な人ではないでしょう。

 よいセラピストは、患者の悲劇に巻き込まれることなく、セラピーを軌道に乗せられなければなりません。
 セラピーにおいて、クライアントがどれほど自分の感情を管理できているかを把握します。

 自殺傾向のない高機能のBPDは、何故か自分の感情を和らげることができます。
 それでも、泣いたり危機に陥ったりし、一日数回電話してくることがあります。

 セラピストが、クライアントの精神科医とうまく連絡を取り合うことは不可欠です。
 また、クライアントの長所や成果を強調することは大切です。

 良いセラピストは、クライアントに対して深い同情を感じます。
 特に、クライアントが取り組む意志があり、感情的に弱い場合はそうです。

○未成年のBPDの診断に関して

 子供の病気で、混乱した人間関係,アイデンティティの混乱,自傷,過度の衝動性,空虚感,不合理な信念,妄想,解離のような認知障害、これら全ての症状が生じるのは、BPDだけです。

 BPDと他の障害の主な違いは、自己破壊的行動の程度,自己嫌悪の程度,絶え間ない自殺思考です。
 BPDの若者の多くは、攻撃的になったあとで、恥じたり後悔したりします。

 BPDの成人は、症状と苦痛が子供時代や思春期に始まっています。
 思春期の若者がBPDの症状を抱えているなら、診断を下して治療するべきです。

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

診断の開示

  専門家のなかには、BPDの診断を告げることに賛成しない人もいます。
 理由は以下のようなものです。

・BPDの人が、診断を普遍のものとして受け入れてしまう
・診断を、変化しないための言い訳にするかもしれない
・診断を無意味なものと考えている
・気分を害したり、怒ったりするかもしれない

 親の気分を害さないために、BPDの診断を親に告げない臨床家もいます。
 BPDへの偏見は、患者側より臨床家側のものです。

 BPDの人が診断を知る利点は、以下のようなものです。

・ひとりぼっちでないことを知り、孤独感が薄れる。
 ネット上のコミュニティで情報と支援を共有できる。
・本やインターネットでBPDについて学ぶことができる。
・積極的に治療計画に参加できる。
 患者が話し合いに参加し、合意することが重要。

 BPDの人は、学習することで、セラピーのプロセスの重要な一部になります。

 実際は、診断を聞いて怒る人もいます。
 しかし、それが人生の肯定的なターニングポイントになると考えるようになります。
 悪い知らせに折り合いを付けることに、近道はないのです。

○忍耐強く:セラピーには時間がかかります
 変化することの難しさを過小評価しないでください。
 BPDの人はそれまでやってきた歪曲したやり方を、すぐに取り消すことできません。
 頭では納得しても、変化するのにより長い時間を必要とします。

 責任を取るのは彼らにとってはとても難しいことです。
 進歩が見え始めるかもしれませんが、浮き沈みもあるでしょう。


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

診断を得る

  
 精神科の診断はなぜ難しいのでしょう。
 身体疾患と異なり、細菌やがん細胞が存在しないのです。

 臨床家のなかには、診断に価値を置かず、主観的な人もいます。
 具体的な問題や心配事に焦点を当てるのを好みます。
 それは、BPDに有効な治療があっても、考慮に入れないということになります。

 診断に価値を置く臨床家は、診断がより深い理解をもたらし、問題に対処したり、治療計画を立てる一助になると考えます。

○治療計画
 患者とセラピストは、セラピーの目標と達成について計画を立てるべきです。
 それには次のことが含まれます。

・クライアントの問題,およびその程度。(軽度、中程度,重度,危険な状態)
・特定の治療目標と、取るべき手段。(治療方法,その頻度,薬物など)
・他のヘルスケア提供者の役割。
 必要なら、計画を見直す期間。

○子供の診断
 未成年のパーソナリティは完全に形成されてないので、臨床家は青年期までBPDの診断を見送ると言います。
 しかしそれには長い時間がかかるため、必要な援助を子供から奪ってしまいます。

 子供にBPDの症状が1年以上続いた場合、DSMも子供の診断を容認しています。
 そうすれば、はっきりした診断の前でも、彼らを援助できます。

 典型的な青年期の行動化と、BPDのものを区別するのは、行動そのものではなく、その行動の原因です。
 BPDの青年は、深い苦悩,空虚感,自己嫌悪,見捨てられ不安に対処する方法として、薬物使用,親への激怒,自傷をするのです。

 総合的な評価には次のことが含まれます。
・子供の現在の問題や症状
・健康,病気,治療の情報
・親と家族の健康,精神科の病歴
・子供の発達,学校の成績,友人,家族関係

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

 

クライアントとセラピストとの関係

  
 セラピーの成功において、治療手段が関係する部分は15%でしかありません。
 残りの85%は、クライアントとセラピストの治療関係に関わっています。
 プラセボ効果でさえそれに含まれます。

 それは次のようなBPD患者に特に言えます。
 自己価値観が低い,見捨てられるのを恐れる,人を信頼できない,親密な絆を結ぶことに問題を抱えている。

 望ましい関係は「治療同盟」です。
 セラピストは、共感,無条件の思いやり,承認を提供し、信頼感を構築します。
 クライアントは、安心感,相手からの尊重・理解を感じます。
 そして、穏やかに,批判的でなく、自分の行動を観察できるようになり、洞察と成長に繋がります。

 BPDの知識のある臨床家を探すのは難しいですが、上記のことは希望を与えてくれます。

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

候補者を評価しましょう(2)

 (前の記事からの続き)

《ソフト面における要素》
 以下の質問の答を得るには、オフィスへ行く必要があります。

・治療スタイルは? 
 支持的療法は、ストレスを軽減して今の問題を話し合うことです。
 他に、クライアントに洞察を与え、変化を起こすような、より深い作業をする臨床家もいます。
・自信があるか? 
 「分かりません」と言えたり、防御的にならず答えるのは、自信があるしるしです。
・話を聞いてくれ、安心させてくれ、受容的でありながら、クライアントが成長する課題を与えてくれるか? 
・男女の性差をどう考えているか? 
 性差についての考えが、BPDの診断に影響を与えます。

《BPDに関した要素》
 自由形式の質問をしましょう。

・BPDと、BPDの治療についてどう考えているか? 
 セラピストが何を重要と考えているか。
 そぶりや声の調子からも分かります。
 BPDの定義,原因,治療について聞きましょう。
・治療には、薬物とセラピーの両方が必要と思うか? 
 一般的に答は「イエス」のはずです。
・BPDを治療した経験があるか? 
 答が「はい」なら、どのくらいの経験があるか? 
・最新のBPDの研究に着いていっているか? 
・家族がどのような影響を受けていると思うか? 
 家族療法も行なっているか? 
・(クライアントに併存障害がある場合)併存障害を治療した経験があるか
・BPDからの回復は可能と思うか? 
 どの程度の回復が可能と思うか? 
 セラピストが否定的でも、それを事実と受け止めず、希望を失わないでください。
 彼は最新の情報を知らないかもしれません。


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

候補者を評価しましょう(1)

 
 候補者に連絡する前に、ネットで彼らの名前を検索してみてください。
 候補者に電話かメールをしましょう。
 電話で数分話ができるか尋ねましょう。
 よいセラピストならば、質問することで感情を害したりしないはずです。

 「境界性パーソナリティ障害」という言葉を使うか考慮しましょう。
 臨床家は低機能のBPDをイメージする可能性が高いです。
 クライアントが低機能でない場合は、BPDという言葉を使うのには注意してください。
 低機能だとしても、まずその特徴を説明して、セラピストが偏見を持たないようにしてみてください。

 専門家は実際より立派に見えることがあります。
 偏見は持たないようにしながら、直感を信じてください。

 今後、臨床家を次の3つの領域で評価することになります。
 ハード面,ソフト面,BPDについての新年です。

《ハード面における要素》
 次のような質問をしましょう。

・新患を受け付けているか
・料金はいくらか.保険は利くか
・診療時間外でも対応は可能か
(低機能の場合、これは重要です)
 ドクターが対応できないときはどうするか
・どのような教育と訓練を受けているか
・資格を持っているか
・(クライアントが子供なら)子供や若者を治療する訓練を受けているか
 (子供を専門とするセラピストは少数です)

(次の記事に続く)

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

セラピストを探す準備(2)

○コンタクトを取りましょう

・友人や家族に、知っているセラピストがいるか尋ねましょう
・スキーマ療法,弁証法的行動療法についてネットで調べてください
・その他の医療専門家にも相談しましょう
・地域の病院の精神科に電話して、看護師長に専門家を推薦してもらいましょう
・インターネットでセラピストのデータベースを調べましょう

・すでに精神科医やセラピストにかかっていたら、推薦できるセラピストや精神科医を尋ねましょう
・病院やクリニックに勤めている知り合いに尋ねましょう
 口コミの情報は貴重です
・BPDの人に併存障害〔*注〕があれば、その分野の専門家から始めるのもよいでしょう
 同業者を知っているかもしれません
〔*注:ジオログ2014年1月11日,12日記事参照〕

・電話帳の公共のページで、地元のメンタルヘルス機関を調べましょう
・地域の心理士協会に電話しましょう
・地域のクリニックで、精神科のある所を探しましょう
・大学病院の精神科に電話しましょう
 最先端の調査研究に従事していることが多いものです
・電話帳で、カウンセリング,心理士,ソーシャルワーカー,心理セラピスト,社会福祉援助,メンタルヘルスなどの項目を見ましょう
・勤めている会社に雇用者の援助プログラムがあるか調べましょう

・セラピストの候補者と面会したあとで、他の人を紹介してくれるか尋ねましょう

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

セラピストを探す準備(1)

 BPDについてあらゆることを学び、情報に通じた消費者になりましょう。
 原因と治療については、矛盾する情報を目にするでしょう。
 調べれば調べるほど、皆さんの基礎は固まります。

○病歴のファイルを作る
 この障害との苦闘を記録しましょう。

・辛い破局のあとで自傷をしたなど、年令と兆候・症状
・過去の治療歴(診断名,治療が有効だったかなど)
 服用している薬(用量,服用時間,服用目的)
・過去にやめた薬(用量,効果がなかったか,副作用)
 異なる用量にすると、効果があったり副作用が減ったりする
・離婚,引っ越し,大事な人の喪失など、家庭内のストレス要因

 これらの情報は、尋ねたい質問を思い出させてくれます。
 そして臨床家が、最短で最多の情報を得るのに役立ちます。
 また、ひとつにまとめたものを見ることは、皆さん自身の承認と癒しになります。

○親は批難されると覚悟する
 親が障害の原因だと考える臨床家に、きっと出会うでしょう。
 その心の準備をしておいてください。

 まるで、娘が溺れて助けを求めたら、親が意図的に娘を溺れさせたと、救助員に殴られるような感じです。
 殴られている間、娘は溺れて叫んでいるのです。

 もし責められたら、自分の周りにゴムの盾があるつもりで、言葉を跳ね返すようにしましょう。
 その言葉を個人的に捉えないでください。

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

 

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