2014年6月アーカイブ

意図的なコミュニケーション(5)

 
(前の記事からの続き)

《防衛的にならない》
 防衛的反応は、「あなたの感情は間違っている」というメッセージを伝えます。

 人は激怒すると、別の見方ができるか冷静に考えることができません。
 自己防衛を試みても、火に油を注ぐだけです。

 当人が望むことは、話を聞いてもらうことです。
 もちろん、反論せずに耳を傾けるのは、傷つくことを意味します。

 怒り,批判,批難を、受け入れるべきだということではありません。
 BPDの人には、問題を抱えていることを認め、病気を管理していく責任があります。

 BPDの人は脳の障害を持っているのだということを、心底認めることができれば、皆さんはダメージを受けることなく、言葉を素通りさせることができるでしょう。

《遅らせる,気持ちをそらす,緊張を和らげる,DEAR》
 「責める」ような表現は避けてください。

責めるような表現:あなたが喧嘩を始めたのよ
中立的な表現:私たちは喧嘩になったのよね

責めるような表現:君が叫び続けたから、僕はその場を離れたんだ
中立的な表現:喧嘩がエスカレートしたから、僕は離れる必要があったんだ

責めるような表現:君がこうしたんじゃないか
中立的な表現:こんなことが起こったんだ

責めるような表現:あなたが怒鳴ったのよ
中立的な表現:大きな声だったわね

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

意図的なコミュニケーション(4)

 
(前の記事からの続き)

o認めていることを言葉以外の方法で伝える

 コミュニケーションにおいて、言葉で伝えられるものはわずか7%です。
 残りは、声の調子(38%)と表情(55%)で伝えています。
 言葉と身体言語が矛盾している場合、聞き手は、言語ではなく、非言語のほうを信じるのです。

 そしてBPDの人は、非言語的コミュニケーションに信じられないほど敏感です。

 以下は、共感的に認めることと傾聴のために、すべきこととすべきでないことです。

するべきこと:
・アイコンタクトを用います。
 優しい,しっかりとした,関心を伝える目で見てください。
・表情をリラックスさせてください。
 目が笑っていない偽りの笑顔はいけません。
・腕は組まないで。
・首をわずかにかしげます。
・聞いていることを示すために、ゆっくりと頷いてください。
・身体をリラックスさせてください。
・座っている場合は、関心を示すために上体を少しだけ前に傾けてください。
・近づいてください。ただし近づきすぎてもいけません。
・話すときは、1秒待ってから話してください。
・BPDの人が楽になるよう、はっきり分からないように、相手と同じ姿勢をとってください。
・接触は究極の非言語的な結びつきです。
 どのように触れるかは、相手との関係性と状況次第です。

すべきではないこと:
・歯を食いしばる
・睨む,目を背ける
・目を閉じる
・顔をしかめる,眉をひそめる
・あくびをする
・そわそわする
・身体を緊張させる
・後ろにもたれかかる
・時計や出口を見る
・貧乏ゆすりをする
・テレビを観る,他のことを始める

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

意図的なコミュニケーション(3)

 
(前の記事からの続き)

o認めていることを言葉で伝える
 優しく、穏やかで、相手を理解するよう、丁寧にしてください。

・言葉による励ましを用いましょう:
 「へえ」「そう」「すごいね」など、相手の話に耳を傾けていることを表します。
・相手の感情を鏡のように返しましょう:
 「悲しいね」「恐ろしいね」「素晴らしいね」「大変だったろうね」
・関心を持っていることを示しましょう:
 「私も幸福に思うわ」「僕も寂しく感じるよ」「僕も幸福な気分だよ」
・激しい感情を強調しましょう:
 「え~、そんな!」「そんなことがあったなんて!」

 承認的な質問は、解決策を見つける手助けに重要です。
 皆さんが相手の問題を解決する必要はありません。
 彼らが自分自身の感情と願望を探求し、解決策に導く手助けができます。

 以下のような表現が提案されます。

・以前このようなことがあったとき、どうしたの?  どう感じた? 
・どのような選択肢がある?  それぞれどんな気持ちになる? 
・話を聞こうか?  どうしたら君の力になれる? 
・直感的に、どう感じる? 
・情報を得る場や、電話できる相手はいる? 
・別の見方ができる? 
・過去に思い付いた解決策が、うまくいくのでは? 
・友だちに同じことが起こったら、どう言ってあげる? 

 具体的に説明してくれるよう頼んでください。
 ただし、厳しく尋問してはいけません。

 相手を理解しようという嘘偽りのない気持ちが、承認に繋がるのです。
 真に重要な、BPDの人の感情的な弱さに呼びかけることになるからです。

 「明確化のための質問」は、スプリッティング-羞恥心-恐れの螺旋をくぐり抜け、重要な問題を明らかにするのに役立ちます。
 いくつかの例を紹介します。

・「私が怒っていると言ったけど、どのことを示していたの?」
・「君の気分がよくなるために、できることはある?」
 「争いを少なくするために、何をしたらいいと思う?」
・「あなたの思いの強さをなかなか理解できないの。
  別の言い方で説明してくれる?  もっとよく理解したいの」
・「何があなたにそう思わせたの?」 「どういったことを僕はしたんだろう?」 

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

意図的なコミュニケーション(2)

 
(前の記事からの続き)

o共感
 共感は同情とは異なります。

 例えば、同情は、事故現場に車で通りかかったとき、壊れた車のドライバーに「頑張って」と声をかけ、ドライブを続ける人に似ています。

 共感は、当人の身になって、相手の立場に自分自身を置くことです。
 例えば、車から降り、事故にあったドライバーの肩を抱き、「こんなことになって大変だね」と言ってあげる人です。

o積極的傾聴
 私たちは大抵、話を聞いているとき、他の考えが頭を出たり入ったりします。
 どう返答しようかと考えることが多いのです。

 過去の争いに話が触れると、言い返せる機会を伺います。
 私たちは同意できないことを取り除き、自分の考えに合うものに焦点を合わせます。

 言われていることの微妙なニュアンスを聞き逃してしまいます。
 これが欲求不満や誤解を引き起こしてしまうのです。
 積極的傾聴は、「私は全神経を集中させて耳を傾けます」というメッセージを伝えます。

 判断,意見は一時保留しましょう。
 相手の言葉,声の調子,表情,身振り手振り,感じていることに焦点を合わせてください。
 同意できない場合でも、顔をしかめたくなる衝動を抑えてください。

 BPDの人の、表に出ている感情だけでなく、内奥にある感情にも目を向けてください。

 途中で口をはさむのは厳禁です。
 身の安全が問題の場合や、混乱して説明が必要でない限り、話をしないでください。

 アドバイス,慰め,励ましは、相手の話の邪魔をするだけではありません。
 共感的に認めるのに欠かせないこと--相手の言葉が本人にとって何を意味するのか--を、見失ってしまいます。

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

意図的なコミュニケーション(1)

 
 私たちは事態を悪化させるつもりでなくても、怒りをあらわにし、自己防衛します。
 自分が正しく、間違っているのは相手だと分からせようとします。

 しかし、たとえ望み通りになっても、二人の関係の代償は高くなってしまいます。
 BPDの人のほうがより代償は高く、スプリッティング-羞恥心-恐れの螺旋の引き金となります。

 意図的なコミュニケーションは、言葉で勝つアプローチに代わる、素晴らしい方法です。
 「この人を落ち着かせよう」「彼らの協力を得よう」などの意図を持ちましょう。

 以下のような理由で役に立ちます。
・何が目標か分かると、目標に達する可能性が高くなります。
・目標に到達しなくても、正しい方向に向かっています。
・状況をコントロールできている気持ちになります。
・状況を悪化させることが少なくなります。

《聞いたことを認める》
 共感的に認めることは、最も強力なコミュニケーション・テクニックです。
 「承認」という表現に似ています。
 共感,傾聴スキル,認めることを融合させたものです。

 共感的に認めることには、2つのステップがあります。
ステップ1:
 質問したり、何を言おうか考えたりせずに、100%相手に積極的に耳を傾けます。
ステップ2:
 BPDの人の考え方を感情から引き離します。
 思考に必ずしも同意せずに、感情を認めたことを本人に伝えます。

 共感的に認めることは、思考への同意を必要としません。
 共感的な承認は、どれほど多くても多すぎることはありません。
 色々な方法で、何度も伝えてください。

 共感的に認めることの3つの要素は、共感,傾聴,認めることです。

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

コミュニケーションの準備(2)

 
(前の記事からの続き)

o激怒
 最も厄介な問題のひとつは、破壊的な激怒です。
 不適切な怒りが、突拍子もなく、頻繁に現れると、恐ろしいものです。

 BPDの人の怒りを1から10までのスケールで評価してください。
 1から5までは、落ち着けることができるでしょう。
 6以上で、治療を受けていないと、鎮めることができないかもしれません。

 6以上の場合は、彼らの思考と感情は歪んでおり、言うことは筋が通りません。
 彼らが何を言っても、耳を傾けないでください。
 彼らは状況を理解することも、結果を考えることも不可能なのです。

 やり取りを一時的に中断させてください。
 怒りが続けば、その場を立ち去ってください。
 議論したり、捨てぜりふを言うのはやめましょう。

 以下の言葉のいくつかを繰り返してください。
「あとで話すことにしよう。落ち着いたときにね。
 僕は君の話に耳を傾けたいんだ。でも今そうするのは、あまりに大変なんだ」
「気を静めるために、少し時間をください。
 あとでなら話ができるから」

 自分自身に以下のように言ってください。
「このことを個人的に受け止めない。
 これはボーダー・ライオンが話しているのだから」
「ここに留まって言い争ったら、事態はますますエスカレートしてしまう。
 僕も、二人の関係も傷ついてしまう」
「本人には、今すべてを理解できないけれど、私にはできる。
 今は楽ではないとしても、続ければきっと楽にできるようになる」


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

コミュニケーションの準備(1)

 
《呼吸》
 切羽詰まると、ストレス反応は、心身に混乱を引き起こします。
 深呼吸をすると落ち着いて、考える余裕ができます。
 胸ではなくお腹で、ゆっくりと深く呼吸してください。

 「呼吸の部屋」を作ってもいいでしょう。
 安全で、力づけてくれる、想像上の場所です。

《安全第一》
 BPDの人とのコミュニケーションの第一ルールは、いつなら安全かを知ることです。
 注意事項は、激怒/言葉の暴力,身体的暴力,自殺の脅しです。

o身体的虐待と自殺
 虐待する男性の約3割,女性の約5割がBPDを持っています。
 身の安全を守ることが必要です。
 助けを求めてください。

 自殺の危険性が差し迫った場合には、救急車を呼ぶか、病院に連れていってください。
 家族は躊躇して、問題に取り組まないことがあります。
 BPD本人も、「余計なお節介」をやめるよう言い張ることがあります。

 家族は、本人が落ち着いているときに、自殺の話に取り組むと、かえって問題を引き起こしてしまうのではないかと恐れます。
 しかし、事前に質問することで、困難を避けることができるのです。

 BPDの人は感情を言葉にするのが苦手で、破壊的な行動化をする傾向にあります。
 従って、隠し立てをしないで、質問して問題に取り組むか、セラピストに相談することによって、行動ではなく言葉で、感情に対処できるようになるのです。

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

基礎を築く(2)

 
(前の記事からの続き)

《「権限」を見直しましょう》
 ある人が権限を持つと、その人からの批判が私たちを傷つける可能性は高くなります。
 その権限がどこから来ているのか検討する必要があります。

 私たちの家族は、「人間関係による権限」を持っています。
 彼らに権限を与えているのは、私たちです。
 私たちが彼らを愛し、尊重し、彼らを喜ばせたいと思うからです。

 権限を見直すために、自分自身に問うてみましょう。
・その権限はどこから来ているのでしょうか? 
 皆さんか与えない限り、相手が持つことはありません。
・BPDの人は、皆さんの性格や資質を断定する専門的な知識を持っているでしょうか?
・皆さんは、喜びそうにない人を喜ばせようとしていませんか? 

 歪んだ認識の障害を持つ人に、皆さんの価値を決めさせるのは道理に合いません。

・より高い権限を求めてください。
 BPDの人の意見が正しいか、他の人に尋ねてみましょう。
 皆さんが酷く傷ついている場合は、セラピーも必要です。

・BPDの人と話すときは、次のように考えましょう。
 「彼女がこのように話すのは、彼女が怯えているからだ」
 「彼女は知能指数は高いかもしれないが、感情的知性は低い」
 皆さんの心の声に権限を与えてください。

・彼らの子供のような姿をイメージしてみましょう。
 彼らは、見捨てられた、虐待された子供,または怒っている衝動的な子供を演じているのではないでしょうか。


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

 
 家族とのコミュニケーションを向上させる方法は、 3つのグループに分けられます。
(1)基礎を築く
(2)コミュニケーションの準備
(3)意図的なコミュニケーション

 高機能,低機能のBPD、両方に適したテクニックもあれば、どちらか一方のテクニックもあります。
 ただし、BPDを完全に克服できるものではありません。

 テクニックを使いこなせるようになるには、時間も必要です。
 まずは友人と練習してみてください。

○基礎を築きましょう
《協力的な雰囲気を作りましょう》
 誰が正しいかということよりも、人間関係そのもののほうが重要です。
 双方が満足できる解決策を見いだす上で不可欠です。

 BPDの人が間違っていることを納得させようとすると、スプリッティング-羞恥心-恐れの螺旋の引き金を引いてしまいます。
 代わりに、その関係自体を擁護すれば、各自がその関係性に満足する可能性が高くなるでしょう。

 双方がうまく折り合い、チームとなり、支ええっていく方法を見つけたいと思います。
 最も求められるのは、愛情と親密さです。

 一夜にしてできるものではありませんが、皆さんは、BPDの人に見習ってほしいモデル役を務めているのです。


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

○恐れが怒りとし解釈される
 BPDの人の中には(主に高機能のBPD)、恐れ(特に見捨てられる恐れ)を、怖くて認められない人がいます。
 恐れは、批難と過去の失敗を呼び起こし、さらに羞恥心とスプリッティングを引き起します。
 怒りのほうが、ずっと楽な逃げ道なのです。

○「何でもないこと」をめぐる喧嘩
 non-BPDは、些細なことで責め立てられるように感じ、何でもないと思われることで全面的な言い争いが生じかねません。
 本当の問題はもっと深いところにあります。
 スプリッティング,羞恥心,承認されず価値がないと感じること,アイデンティティの欠如です。

 例えば、コントロールの問題は、BPDの人が自分をコントロールできないところから起きます。
 彼らは自分が無力だと感じる変わりに、他者に対して無意識に力を主張するのです。

 もうひとつの問題は、羞恥心と、アイデンティティの欠如の組み合わせです。
 BPDの人は自分に良いイメージを持つことができず、他人が彼らに持っている(と彼らが考える)「全て悪い」のイメージに対抗できないのです。

 彼らは、意見の違いを個人的な侮辱として経験します。
 多くの争いの原因は、BPDの人の感情が事実が作ってしまうということです。
 彼らの感情が事実の解釈に影響を与え、認知の歪みは現実とかけ離れた推測をしてしまうのです。

 皆さんははれものに触る日々のなかで、ボロボロになっているかもしれません。


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

 
●BPDの人のコミュニケーションにおける欠陥(1)

 コミュニケーションには、次のようなスキルがあります。

・自分の思考と感情をチェックする
・他人の思考と感情を正しく判断する
・相手の話に耳を傾ける
・相手に配慮し、自分の当面の願望は脇にのける
・状況を総合的に捉え、相手を好意的に解釈する
・人が自分と異なる意見でも、脅かされていると感じない
・感情を発散させたいときでも、冷静になる

 BPDの人はこれらの多くがかけています。
 入ってくるメッセージと出ていくメッセージの両方が歪められるのです。
 単語や文章が、順番が逆になったり、裏返しになったり、文脈が失われたように聞こえます。

 BPDの人は、攻撃性がなくても、未熟なコミュニケーション能力のために、絆を築けないことがあります。

○スプリッティング-羞恥心-恐れの螺旋(らせん)
 BPDの人の情報処理は、皆さんとは異なっています。
 脅威が迫ると、激しい感情が脳をハイジャックしてしまいます。

 羞恥心は、何でもないところにネガティブな考えをでっちあげ、敵意として曲解します。
 見捨てられ不安が急激に迫ってきます。
 そして、衝動的な攻撃性が内外に爪を立てるのです。

 スプリッティング-羞恥心-恐れの螺旋は、何の前触れもなく生じ、皆さんを混乱の中に放り込んでしまいます。
 しかし訓練と経験を積めば、それが近づいてくるのを察知できるでしょう。

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

行き詰まり感から抜け出す(2)

 
(前の記事からの続き)

○救助するのではなく、援助しましょう
 自分がなってほしい姿を望むのではなく、相手に責任感を持たせ、自立を援助しましょう。

 悪い結果になるのを知りながら、見ているのは辛いものです。
 しかし批判も脅しも効果はありません。
 愛と勇気づけることが、最も強い希望を与えてくれます。

 独り立ちしなければ、強くなれません。
 間違った助けをするくらいなら、助けないほうがましです。

 健全な援助には、以下のメッセージが含まれます。
・私はここにいます。あなたら必要とするなら。
・私はここにいます。あなたがよくない選択をしても。
・私はここにいます。しかし、限界と境界線があります。
・私は、あなたを勇気づけるためにここにいます。
・私は、客観的に考えるのを援助するためにここにいます。
・あなたの選択の結果は、あなたの責任です。
・関係が歪んでしまったら、別れる覚悟があります。

 次のような援助もあります。
・相手の言うことに耳を傾け、気持ちに共感する。
・相手には解決する能力があると信じていることを伝える。
 うまくできたことを誉める。
・「あなたにはどんな選択肢がある?」と尋ねる。
・「私が何をすれば助けになる?」と尋ねる。
・「~なことを考えたことがある?」と尋ねる。

○やる気を持ち続ける
 古い考え方に気付いたら、次のメッセージを自分に伝えてください。
・問題を解決できるのは彼女だけだ。
 僕にできるのは、彼女を愛し、援助することだけだ。
・彼の問題を解決することは、私にはできない。
 私の仕事は、私自身の面倒を見ること。
・障害がある人でも、自分にできることをするよう、期待されている。


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

行き詰まり感から抜け出す(1)

 
○本当の自分に真摯に向き合う
 本当の自分は、仕事や家庭,社会での役割とは無関係です。
 遺伝的なものと、信念,経験,意見などが混ざり合ったものです。

 自分の核となる信念や態度を見直して、以下の質問に答えてみてください。
・その信念は、しっかりとした根拠に基づいていますか? 
・その信念によって、皆さんは幸福,健康,安全を得られますか? 
・その信念は、必要なものを与えてくれますか? 

 自分が何を感じて、物事にどのように反応するかに注意を向けてください。
 考えや感情を価値判断しないことです。
 身体が何を伝えようとしているかにも耳を傾けてください。

 今の生き方は、自分の価値観に沿っていますか? 
 それとも妥協の産物ですか? 

○自分で選ぶ
 生活のなかでどのように反応するかは、自分が決めていることに気付いてください。
 皆さんには選択肢があります。

 「彼のせいで~」「彼女が無理やり~」などの台詞は、語彙の中からなくしましょう。
 「私は~しなければならない」と言うよりは、「私は~することにする」と言ってください。

○過去から学ぶ
 長い間試してもうまくいかないなら、それをやめてください。
 救助する人は、自分は尽くすだけ,相手は搾取するだけの人間関係を経験しており、健全なロマンチックな付き合いを知らないかもしれません。

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

救助欲求(2)

 
(前の記事からの続き)

《救助することがnon-BPDに与える影響》
 BPDの人の歪んだ思考,感情,行動が、救助する人の思考,感情,行動を決定するようになります。

 救助者は、
・操作されているように感じ、相手を喜ばせようとするが、結局批難され、幸福が絶望へと変わる。
・決断力に欠けるため、状況によって心が揺れ動く。
・個人的な成長が遅れる。

《救助することがBPDの人に与える影響》
・行動がもたらす結末を学んでいないBPDの人は、建設的な行動が達成感や誇りなどに繋がることに気付かない。
・あらゆることに関して人任せになる。
・衝動性や、困難に我慢できないなど、BPDの特徴が強化される。
・他者に依存することで、相手に腹を立てる。
・non-BPDが怒ると、BPDの人は混乱し、non-BPDのことを不当だと思う。

《ふたりの関係に与える影響》
 相手がいないと自分は不充分な人間だと思うような関係は、絡み合ったものとなっています。
 依存者やイネイブラー〔*注〕は、お互いに、また他人との間で、双方が行き詰まっています。
〔*注:相手を助けるつもりで、実は回復を妨げる人〕


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

救助欲求(1)

 
 BPDの人を助ける人は、前向きで、神から見捨てられたような相手を失望させない、唯一の存在になろうとします。
 少しの間だけ改善させることができても、結局は惨めな状態に戻って、道連れになってしまいます。

 救助する人たちというのは、BPDの人を愛していて、不快で不当だと思っても、より多くの「救い」の手を差しのべます。
 罪悪感,恐れ,無力感に支配されます。
 努力が実らないことに気付かず、新しい方法を試みることもないのです。

《救助はなぜ効果的ではないのでしょう》
 救助する人は、BPDの人の尻拭いをすることによって、無責任な行動を認可/奨励してしまいます。
 BPDの人ができることを代わりにやってあげることによって、彼らの依存を認可/奨励しているのです。

《救助者の人物像》
 彼らは通常思いやりがあって、人の苦しみを和らげたいという親切な人です。
 BPDの人は好きな人を偶像視するので、救助者は自分だけが愛されていることを嬉しく思います。

 以下は彼らに共通する特徴です。

・必要とされ、犠牲になることで、自尊心を手に入れる。
・人の問題を解決しようとする。
・「よい人」でいることに大変な価値を置き、常に承認を求める。
・自尊心が低く、自分の考えや要求を疑う。
・人の期待が妥当かどうかを考えず、それに応えようと努力する。
・人の気持ちに必要以上に責任を感じる。
・自分に非がないことでも批判を受け止め、衝突を避けるために何でもする。
・直感を頼りに人間関係に飛び込む。
・純粋に頑張れば人から愛されると信じている。

(次の記事に続く)


*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

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