以上のことから、言葉の意味のプロトタイプ(典型例)を常識的なものに設定し直すことがいずれ不可欠となるのです。
しかし、BPD当事者は・・・
・言葉の意味把握が「ずれている」「変わっている」と周囲の人々が指摘しても傷ついたり憤慨するだけで治療に役立つことはない。言葉の使い方は「ずれている」だけで「誤っている」わけではない。
・BPD当事者が言葉を使って生きていく軸をずらすことになるので、自身自信で容易に実行できることではない。
では私たちはどうすればよいのでしょう?
言語を取得する途上にある子供と養育者との関わりのように繰り返すこと!
例:
柴犬(犬のプロトタイプ)を見たとき:
母親「ほらワンワンよ」
コーギー・ベンブローク(尻尾のない変わった犬)を見たとき:
母親「ほらワンワンよ」「あら、でもこれ尻尾のないワンワンね」
ポイント
上記の例では、母 親は子供に犬のプロトタイプが柴犬であると教えていますが、コーギー・ベンブロークについては、同じ犬ではあるが犬のプロトタイプではないと説明し直して いることです。こういったことを繰り返すことで子供は犬という言葉の意味だけでなく、柴犬が典型的な犬だという様々な特徴に関する知識を身につけていくの です。
幼児を対象にした場合に比べてBPD当事者には以下の二つの工夫が必要
・豊かな語り口を意識的に用いること
・柔らかな言い方を旨としながらも、「言葉の意味に常識的なプロトタイプが存在すること」に関しては、BPD当事者がどれだけ拒否反応を示したとしても絶対に譲らないこと
※BPD当事者と言葉の意味を巡って対決することではなく、標準的なプロトタイプが存在することを100回、200回と忍耐強く指摘していくことを意味します
参考文献:
「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド」 黒田章史著 岩崎学術出版社 2014年3月10日
文責:吉本