1980年代以降に開発された、BPDに特化した様々な治療法がどれも認知療法的・認知行動療法的なのは、これまで説明してきた問題に対して何らかの対応が必要であった結果であると黒田先生は述べています。理由としては、BPD当事者の「反応傾向(癖)」が私たちとは概ね同じでない限り、彼らが「どのように考え感じているか」対話で明らかにすることができないためです。
問題点はこれらの治療法は、下坂の「常識的家族面接」を除いて主に個人面接であることです。確かにBPD当事者の「反応傾向(癖)」を私たちと同じようにするために様々な治療様式を用いることはできます。しかし、以下に列挙する3つの理由により個人面接を治療の主軸に置くことは、充分な精度で訓練を行う中で大きな問題を生みだすのです。
1. 「反応傾向(癖)」の適切さを誰が評価するか
2. 「反応傾向(癖)の違い」をどこまで踏み込んで修正できるか
3. 「反応傾向(癖)の違い」をどれくらい頻繁に修正できるか
次回ではこれら3つの理由を詳しく解説していきます。
引用・参考文献:
「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド」 黒田章史著 岩崎学術出版社 2014年3月10日
文責:吉本