2015年7月アーカイブ

治療の始め方

反復トレーニングの<場>としての家族面接


 ここからは、治療をどのように始めたらよいか説明していきます。治療の始め方について、詳細に説明する理由は以下の通りです。

  • BPDを治療する場合、治療をどのような形で始めるかは、治療の成否を左右するほど重要なこと
  •  BPDの治療には家族面接を継続的におこなうことが必要不可欠(しかし、カウンセリングとしての家族療法ではない)→手間の割にはメリットが少ない

 

黒田先生が述べられている「家族面接」とは、BPD当事者との間で通常の対話関係を成立させることを目的とした反復練習やトレーニングとして行われることを指します。家族と共に反復練習やトレーニングの場を作り上げていくための準備と考えてください。

 次回以降では、家族面接の導入法及び治療プロセスの中で家族を傷つけない重要性や、自宅を治療者の指導のもと適切な治療環境への作り替え方、「何が原因でBPDに罹ったのか」という問題の取り扱い、「治療に伴う苦痛やストレス」についてBPD当事者や家族にしっかり説明しておくことの重要性についても触れていきます。

 

 

引用・参考文献:
「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド」 黒田章史著 岩崎学術出版社 2014310

 これまで、BPD当時者の「反応傾向(癖)」を評価したり修正したりする作業を担えるのは家族のみであると説明してきました。しかし、最初からできるわけではありません。そのような関わりをできないからこそBPD当事者や家族はクリニックを受診することになったのですから。家族を通した治療介入について以下にまとめてみました。

 

今までのおさらい

・「凡人」として「豊かな語りの口」で語ること

 しかし・・・BPD当事者のどのような「反応傾向(癖)」に注目し、どこまで踏み込んで修正したら良いのか、BPD当事者だけでなく家族もわからないのが普通→そのための家族面接


家族面接の大きなメリット

1.       治療者が家族やBPD当事者に対して介入方法を示すことができる

      実践的な知識を家族に示すこと(例:BPD当事者の些細な「反応傾向(癖)」をここまで踏み込んでしつこく修正しても    かまわないこと)、つまりお手本を示すことで治療的対応法のコツを家族が把握できるようになります。

2.       「反応傾向(癖)」につちえ修正すべき課題であることをBPD当事者-家族-治療者の間で共有でき、家族が繰り返し指摘していくための基礎固めとなる

 BPD当事者のショックが一番大きいときは最初に指摘された時なので、その後の指摘が繰り返されるにつれ、指摘されること自体のショックは和らいでいくものです。また、BPD当事者が家族からの指摘に反発した場合でも、「診察の時に先生も言っていたでしょう」となだめやすくなる点もメリットとして挙げられます。

 

 BPD当事者の「反応傾向(癖)」に対して、ここまで踏み込んで修正して良いのだという実践的知識や治療的介入のコツを家族は把握できるようになります。

 上記で説明したような準備を続けていくことで、家族が家でBPD当事者の「反応傾向(癖)」に対して、評価や修正を行うことができるようになるのです。

 

 

引用・参考文献:
「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド」 黒田章史著 岩崎学術出版社 2014310日」

 

文責:吉本

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