BPD治療を適切に進めるために、自宅を治療環境として作り替えるための介入が必要です。2つの介入がありますが、今回は以下の1つを取り上げて解説します。
1. 家の中から「極端なもの」「過激なもの」取り除く
BPD当時者には、興奮を追い求める傾向がよく見られます。だからといって、過激なもの、極端なものが得意向いていると言う訳ではありません。彼らは、他人とのコミュニケーションの僅かなつまづきに耐えれないほど、色々な刺激に対して過敏に反応してしまいます。
例と対応法:
・ディズニーランドで朝から晩までハイテンションで遊んだ後、疲れて終日寝込んでしまう、抑うつ的になる、イライラが募って家族に当たり散らす→その日の夕方までに帰宅する
・残酷な描写のある小説、映画、テレビドラマ、ゲームやインターネット、自殺の仕方や殺人事件の本、過激な発言が飛び交うバラエティ番組→「あなたはそうしたものも好きかもしれないけれど、少なくとも今のような時期にはあまり向いていないと思うわ」と当時者が距離を置くように指導する(このような方針について家族によく説明しておく)
・夫婦喧嘩、配偶者への愚痴や不満を当時者の前で話す→可能な限りと当事者の見ている前や聞こえるところで喧嘩や愚痴をこぼさないように家族に約束させる
・当時者の前で、TVの政治討論番組やバラエティ番組などを見ながら両親が過激な言葉で政治家やタレントを罵倒する→非難されて当然な人に対しても過激な罵倒を当事者の前ではしないこと(自分が言われてないにしても抑うつ的になりイライラすることがよく起こるため)
・当時者と比較していなくても、「親戚の~ちゃん」「当時者の友人の~君」が一流大学に入学した、一流企業に就職したなどと、当時者の前で強く褒めそやす(親戚だけでなくTVに出演している有名人も例外ではない)→強く褒めそやすだけで当事者の調子が乱れやすいのでこちらも避けること(さらっと触れる程度ならよい)
「極端なもの」「過激なもの」に接することで起こる当事者の不調は、治療者が積極的に指摘しなければ、当事者自身が気づかないことがよくあります。
ですから、治療開始時に治療者から上記のような問題について詳しく説明し、自宅で「極端なもの」「過激なもの」を取り除いていくように指導することは、その後の治療過程で大きな崩れをなくすために下地として必要不可欠なのです。
引用・参考文献:
「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド」 黒田章史著 岩崎学術出版社 2014年3月10日
文責:吉本