2015年11月アーカイブ

ご家族の皆様へ

本日、関西のご家族の方から新聞記事を送っていただきました。
とても悲しく、無念でならない出来事ですが、
当家族会に参加しておられるご家族の皆様も同じような
状況に置かれていらっしゃいますので、お知らせしなければと
おもい記事を掲載させていただきました。

ご家族は一人で問題を抱え込まないように、
社会に諦めずに助けを発信し続けてください。

直に応えが得られないかもしれませんが、
家族会などのつながりを断たないようにしないでください。
(孤立することはとても危険です)

専門家・福祉・心理を含め、社会全体でこの問題を
しっかりと受けとめてもらいたいという強い願いから
この記事を掲載させていただきました。

当家族会では、当事者の対応法をお伝えしていますが、
「とてもできない!」とおっしゃるご家族も多く、
結果的に家族内だけで問題を抱え込んでしまいます。

行動する勇気・アドバイスされたらまずはやってみる勇気・
人に助けを求め続けることを諦めないで欲しいと強く願います。

ご自分が限界になるまで決して我慢しないでくさい!
孤立しないでくさい。
家族で何とか対象しようと思わないでください。
助けを探し続けてください。

また、

この、ホームページを閲覧して下さっている専門家の皆様
当事者から家族による虐待でわたしはこうなったと
お聞ききすることが多いかと思います。

もちろん、中には虐待している家族もいるかもしれません。
(ネグレクト・治療に関わらない・無関心・暴力・性的虐待・
 他の兄弟、姉妹との過度な比較・過干渉・親の意見を押し付ける
 子どもの気持ちに鈍感過ぎるなど・・・)

しかし、多くの家族は、皆さんと同じように、
懸命に汗水流しながら懸命に働き、
愛情をかけてこどもを育ててきているのです。

あまりにも酷いBPDの症状を診て
親の育て方が悪いからこのようになった・・・
夫がだらしないから妻がこのようになった・・・など
BPDの親・パートナー=虐待
このような考えはスティグマだと私は考えます。

親だから、子育てを失敗したのだから
暴力を振るわれ続けるのはしょうがない。
耐えなさい。
我慢しなさい。
息抜きをしなさい。(どのように?)
警察を呼びなさい(その後どうなるの?)
これまで、家族はこのようにアドバイスされてきました。
しかし、家族は行動することができません。
暴力を振るわれ続け・言葉の暴力を浴びされ続けているため
自己感覚を失っている家族も非常に多いのです。
家族も寄り添ってサポートしてくれる専門家を必要としています

全ての家族が当事者を虐待しているのではなく、
懸命に子どもを救おうと必死で子どもを支えようと
奮闘している親・パートナー・兄弟・姉妹・が存在しています!
家族は敵ではありません。
当事者と同様、家族も助けを必要としています。
どうか、家族の声に耳を傾けて下さい。
BPD当事者とその家族が診察に来たら追い返さないで下さい。
本人が来なければ無理と言わず、家族の悩みにもどうか
耳を傾けて下さい。

しかし
もし、本当にご家族やパートナーが虐待をしているのであれば
あなたは虐待をしていることを認識しておられないでしょう。
その家族も治療が必要となります。
もし、父親、母親、夫で手を出す習慣があり、
いつもキリキリして腹を立て、他の人の意見を聞き入れず、
自分の意見を貫き通す習慣があるのであれば、もしかしたら
あなたがBPD症状を抱えていらっしゃるのかもしれません。
周囲から(当事者以外で)あなたの性格や振る舞い方について、
指摘されたことはありますか?それを頑と譲らず、聞き入れず
自分は自分の生き方を貫き通していますか?
そうであれば、もしかしたら、子どもやパートナーがBPDではなく、あなたがBPD特性を持っていて、周囲を巻き込んでいる場合があります。子どもやパートナーが影響を受けて精神障害的な
症状が出ているのかもしれません。もちろん、その逆もあります。
もし、周囲がそのことに気づいていたなら、この場合は
親やパートナーの治療が必要となりますので、周囲はサポート
してください。具体的なサポートに関する学習は家族会に
参加しながら学びを深めて下さい。

BPD家族会代表 奥野栄子


毎日新聞 2015年11月25日 地方版

長女の遺品の本を手に取る村井さん=和歌山市で、道岡美波撮影

長女の遺品の本を手に取る村井さん=和歌山市で、道岡美波撮影
 約20年間にわたり家族に暴力を振るった精神障害を持つ長女(当時41歳)を今年2月に殺害した罪に問われ、執行猶予付き有罪 判決を受けた和歌山市の村井健男さん(81)が初めて公の場で体験や苦悩を語る。28日午後1時から、和歌山市毛見の県子ども・女性・障害者相談センター である講演とグループディスカッション「求め続けた希望の光-精神障害者を抱え苦悩した生活の実態を語る」。村井さんは「これまで苦しみ、今も苦しんでい るからこそ、同じような事件が起きないように残された時間を役立てたい」と決意した。【道岡美波】
 3人の子供がいる5人家族で、末っ子の長女は、村井さんにフレンチトーストを手作りしてくれる「優しい子」だった。だが、高校 卒業後に就いた仕事はいずれも長続きしなかった。20歳ごろからは家にひきこもり、思い通りにならないことがあると両親に暴力を振るい、食器や家具を壊す ようになった。
 相談を受けた警察が暴れる長女を保護し、保健所職員が精神科に連れて行くこともあった。診断結果は、自己中心的、他罰的になり、暴言や暴力行為などの症状が見られるパーソナリティー障害。入退院は11回を数えた。
 警察から「事件でない限り、これ以上の対応はできない」として刑事告訴の選択肢も示されたが、とてもできなかった。保健所や精神障害者の家族会にも相談したが、長女が訪問などを拒んだ時点で関わりが断たれた。考えつく全ての機関に助けを求めたが状況は変わらなかった。
 長女はクラシックなど音楽が好きだった。「お父ちゃん、聴いてみる?」。よくお気に入りの音楽を保存した携帯電話につけたイヤホンを差し出し、メロディーを聴かせてくれた。
 そして9カ月前のあの日、いつものように勧めてくる長女のあどけない表情を見て、頬を手でなでた。「お母ちゃんからもらったきれいな肌を大切にし いや」。ひょう変したのは、その数時間後だった。1人暮らしを望む長女は両親を責め始めた。「早く新しい部屋を借りろ」。布団にくるまる母親を平手で何度 もたたいた。
 繰り返されてきた光景。限界だと思った。村井さんは「ごめん、ごめん」と言いながら、こたつの電気コードを持ち、背後から長女の首を絞めた。
 和歌山地裁の裁判員裁判の判決は「入院や投薬による改善が望めない」「告訴できなかったことは理解できる」などと指摘。「殺害を回避するための何らかの行為を期待することはほとんどできなかった」として懲役3年、執行猶予5年を言い渡し、確定した。
 精神的に落ち着いている時の長女は「(暴力が)悪いのは分かっているのにしてしまう」と漏らしたりした。「娘は自分たち以上に苦しんでいた」。だからこそ、精神障害者やその家族が孤立せずにすむ社会なら結果は違っていたのでは、との思いに駆られる。
 今でも、幼い頃の笑顔や、背中を丸めて息絶えた姿が脳裏をよぎる。「どうすればよかったのかを社会全体で考え、教えてほしい」。講演後は、似た境遇の人たちの駆け込み寺として、自宅を開放するつもりでいる。 
参加無料。問い合わせはあすなろ共同作業所
(073・487・5560)。=一部地域既報














  これまで説明してきたことと同じく、重要なのは治療過程では苦痛やストレスが必ず伴うことを、前もって家族やBPD当事者に対して充分に説明しておくことです。

 黒田先生は以下のようなに説明をなさっています。

「この病気は、適切な治療さえ受ければ治りは良いと思います。ただし回復するまでに時間がかかります。またこの治療は、ご本人にとって決して楽なものではありません。単なる悩みごと相談というよりも、ご本人に不足しているさまざまな心理的・社会的能力を補うための反復トレーニングを主眼とするものだからです。したがって地道に治療に取り組んでいけば、かけた時間の分だけは必ず改善するでしょうが、それを継続できるようにするためには、家族の方の協力と本人の粘り強い努力が欠かせません」(括弧内原著, 黒田, 2014, p.104

 

上記で述べられているポイントは以下の2つです。

・治療を受けることで、長期的な視点で見るとBPDからの回復と言う大きな利益があること

・回復という大きな利益を長期間得るために、当事者は治療(反覆トレーニング)による苦痛やストレスに耐える必要があること

 当たり前のことではないかと思うかもしれません。例えば、私たちが注射を受ける際、短期的に捉えると痛みは伴いますが、長期的に捉えると「病からの回復や予防」という大きな利益を得られます。この治療方針もそれと同じことなのです。

また、BPD当事者・家族共に日々の生活ぶりや家族との関わりについて記録しておいてもらうことは大変有意義です。こちらも同様にBPD当事者にとってはストレスを伴うことでしょう。しかし、BPD当事者が記録してこなかった場合でも、家族面接では双方を照らし合わすことで、一つの出来事を家族という視点で、BPD当事者とは異なる判断や評価を行うことができます。

 

 このような治療の枠組みを最初から提示し、例え口約束であっても当事者―家族―治療者間で共有できることは、その後の治療過程で生まれる様々なストレスに耐えていくための根っこになるのです。また、BPDの特徴である衝動性への歯止めをかけやすくなるのです。

 

 引用・参考文献:
「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド」 黒田章史著 岩崎学術出版社 2014310

 

文責:吉本

 

 

 

このアーカイブについて

このページには、2015年11月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2015年10月です。

次のアーカイブは2015年12月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

home

家族会掲示板(ゲストプック)

家族会 お知らせ・その他

本のページ