循環病質を基にしたパーソナリティ障害と深く関わりのある躁うつ病(双極性障害)について説明していきます。一部の双極性障害は、パーソナリティ障害と重なる部分が大きいようです。
双極性障害とは
双極性障害とは、基本的には、躁状態とうつ状態の2つの病態を持つ病気のことで、うつ状態だけの「大うつ病」とは異なります。
生涯有病率は、0.3%前後で、大うつ病の8~30%と比較するとかなり少ないですが、診断がついていない軽い双極性障害も含めると、実際の患者数はもっと多いといわれています。
躁状態とうつ状態
躁状態とは、気分の異常な高揚が続く状態をさします。脳の働き活発になったように感じられ、睡眠を取らずに終日活動を続けたり、アイデアがどんどん浮かんできたりします。また、自分にはできないことなど何もないと気が大きくなり、場合によっては破壊的な行動に移る場合もあります。
うつ状態とは、気分の落ち込みが激しく、活動が低下した状態をさします。意欲や関心が失われ、終日塞ぎ込んで食欲も低下します。自分はダメな人間だと思い詰め、希死念慮(死にたいという思い)を起こすこともあります。
双極性障害ではこの二つの病態が交互に繰り返したり、混ぜ合わさったりします。循環病質の人は、双極性障害になりやすい因子を持っているといえます。ですが、循環病質の人すべてが双極性障害になるとは限りません。その人の性格や周囲の環境や人生での経験などが複雑に絡み合って発症するのです。このことから、実際に双極性障害に移行する人はごく一部に限られます。
双極Ⅰ型と双極Ⅱ型
双極性障害には、病態の重いⅠ型と比較的軽いタイプのⅡ型があります。
双極Ⅰ型は、重い躁状態とうつ状態を繰り返す病態で、躁とうつの違いが明確です。前者の時は、投資やギャンブルなどで多額の金銭を浪費したり、性的逸脱行為に走ったり、攻撃性が増して暴力行為に発展することもあります。このようなことから、生活が破綻してしまう場合もあります。
双極Ⅱ型の場合、躁状態の時は、普通よりちょっとテンションが高いという程度のため、本人や周囲の人にも異常が気づかれにくいのです。しかし、大きなトラブルもないまま、精神活動エネルギーが消耗していき、疲れやすくなると気分が落ち込んでうつ状態になります。
最近、双極Ⅰ型の患者数は減少傾向にありますが、反対に双極Ⅱ型の患者数は増加傾向にあるようです。双極Ⅱ型では、躁状態の時には誰も病気に気づかず、うつ状態に陥って本人が苦しいと感じた時にはじめて医療機関を受診する場合が多いようです。
適切な治療を受ける
サイクロイド・パーソナリティ障害やサイクロタイパル・パーソナリティ障害は、双極Ⅱ型の病態と共通点が多く、両者は非常に関連の深い疾患だと考えられています。
受診した患者さんを1、2度問診しただけでは、パーソナリティ障害か、双極Ⅰ型なのかの判断はすぐにはつきません。1人1人の患者さんに、より適切な治療法を見つけるために、じっくりと正確な診断を行う必要があるのです。
引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012年1月10日
文責:吉本