患者さんに、自身のパーソナリティに気づいてもらうことは治療の第一歩です。患者さんの状態に合わせて、個人精神療法、集団精神療法、薬物療法などを組み合わせて治療していきます。
パーソナリティを自覚する
医療機関を受診されるパーソナリティ障害の患者さんのほとんどは、自身のパーソナリティに偏りが有るとは思っていないのです。心身の異常や社会生活の不便を訴えながらも、それが自分のパーソナリティに原因があるとは思いもよらないのでしょう。
このような患者さんには、自身のパーソナリティを客観的に評価し、理解してもらうことが必要不可欠です。
しかし、自身のパーソナリティを正しく理解してもらうことは、意外と難しいのです。医師と面接を重ねたり、家族などとの人間関係を通じて、自身の問題に気づいてもらうなどして、徐々にパーソナリティの偏りを自覚してもらうように導くのです。
複数の療法を組み合わせる
パーソナリティ障害の治療法には、個人精神療法、集団精神療法、薬物療法、認知行動療法(CBT)などがあります。個々の患者さんの状態に合わせて、夫々に適した治療法をいくつか組み合わせて実施します。
薬物療法は対症療法であり、患者さんの苦痛を一時的に和らげるために用いられます。根本的な治療法ではありませんが、即効性があります。
他方、個人精神療法や集団精神療法は、患者さんの根本的な問題を解決するための治療法です。しかし、これらの治療法には即効性はなく、時間がかかります。
他に、反社会性パーソナリティ障害などで、犯罪に手を染めたり、非人道的な行動を取ってしまった場合には、矯正施設などにおける治療(司法臨床)が必要になります。患者さんに自殺やOD(過量服薬)の危険があるとき、患者さん自身や家族が疲労困憊し休息が必要な場合、一時的に入院が必要な場合もあります。
患者自身が治療意欲をもつ
治療に必要なことは、患者さん自身が治りたい・治したいという意欲なのです。パーソナリティ障害の患者さんの中には依存性が強い人が多く、「医師が何とかしていくれるだろう」と頼り切ってしまう人もいます。しかし、他力本願では治療は進められません。自身の問題に気づき、それを改善することで他者と上手くコミュニケーションをとり、社会生活が送れるように努力しようとする姿勢が必要不可欠なのです。
ですから、治療の主役は患者さんであり、医師は脇役という治療関係が大切になります。医師が「ああしましょう、こうしましょう」と主導するのではなく、患者さんのこうなりたいという目標を医師がサポートする形が望ましいといえます。このことは患者さんだけでなく、家族も心得ておく必要があるポイントなのです。
引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012年1月10日
文責:吉本