パーソナリティは変えられないと思われがちですが、社会に適応できるパーソナリティに変えることはできます。適時適切な治療を行えば、社会生活における困り感を減らすことができるのです。
自然に治るものではない
パーソナリティ障害は、放っておいて自然に治ることはありません。
環境や、その人の置かれた状況により症状が強く出ることもあれば、比較的落ち着いていることもあります。しかし、生活上のトラブルがあまりないからといって、患者さん自身のパーソナリティの偏りがなくなったわけではありません。心身のゆとりがある時期や、周囲の人々が自分を寛容に受け止めてくれる環境では、激しい症状は起こりにくく、特有のパーソナリティが目立たなくなることがあります。
しかし、多忙のために心身が疲れ、気持ちのゆとりがなくなったり、人間関係のつまずきやミスが生じると、症状が目立つようになるのです。
摩擦が増えると悪化する
パーソナリティ障害は治療せずに放置しておくと、悪化していく可能性が高いといわれています。
パーソナリティの偏りが小さく、社会生活に支障なく過ごすことができるケース(この場合、障害とは定義しない)では特に問題ないのですが、社会生活におけるトラブルや問題をみられるケースでは、それらにより患者さんの状態を更に悪化させてしまいます。
パーソナリティ障害により、患者さんが他者と衝突したり、非難・批判を受けるようになります。その経験が患者さんの大きなストレスとなり、気持ちや考え方がますます頑なになるという悪循環に陥り、パーソナリティの偏りを強化してしまいます。
結果的に、パーソナリティ障害の症状が悪化したり、他のパーソナリティ障害が併発したりして事態を以前よりも悪化させ、患者さんを追い込むことになるのです。
治療により確実に改善する
前述した通り、パーソナリティ障害は自然に治ることもなく、放っておけば病態が悪くなる可能性があるため、患者さんはできるだけ若いうち(早期)に医療機関を受診し、診断・治療を受けることが望ましいのです。適切な治療を受ければ、パーソナリティの偏りは改善し、社会生活における適応能力も向上するのです。
パーソナリティ障害は短期間の治療で劇的に良くなることはなく、通常5年程度、長い場合は20年以上かかることもあります。
治療を始めてすぐに良くならないと途中であきらめてしまったり、治療者(医師など)に対して不信感を抱く人も少なくありませんが、忍耐強く治療を続けることが重要です。
また、治療の経過中に状態が一時的に悪化することがありますが、長期的な視点を持つことが大切です。短期間の結果に一喜一憂することなく、医師の支持を得て、一歩一歩前進する心構えが必要です。
そして、患者さんが治療意欲を維持できるようにするためには、家族や周囲の支えが必要不可欠なのです。地道に治療を続けることで得られるものもあるのです。治療者と信頼関係を築きつつ、治療に臨むことが重要になります。
引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012年1月10日
文責:吉本