2017年3月アーカイブ

境界性パーソナリティ障害①―どのような人?の続きです。

 

幼児期に確立される「自分」

自己同一性は、幼児期に少しずつ育まれるものです。

生後間もない赤ちゃんは、自分と母親を一体化して捉えていますが、徐々に自分と母親は異なる存在であることを意識しはじめます。そして、不安が生じたときは、母親の側に行ってしがみつこうとします。

このような行動を繰り返すことで自分を支えてくれる母親が子どもの心の中に住むようになり、1人になってもその母親が見守ってくれているという実感を持つことができるようになります。

 

常に不安や恐怖がある

 自分は何者か、自分はどう振る舞えばよいのかわからない境界性パーソナリティ障害の人は、常に不安や恐怖を抱いています。そのため、些細なことで感情が激しく揺れ動いたり、偏った解釈をしたり、極端な行動に走ったりします。

 例えば、職場の上司に対し、極端な評価することがあります。自分を褒めてくれた時には、「素晴らしい理想の上司」と褒めちぎっておきながら、報告書の誤字を指摘されただけで、「最低の人間、上司失格」といってこき下してきます。

 自己像が不安定な境界性パーソナリティ障害の人は、相手が自分を評価してくれるか、交換を持ってくれるのか、敵意を持っているのかということに、異常に敏感になります。上司の軽い指摘も自分の全人格を否定されたかのように受け止め、見当はずれの怒りとなって表現されてしまうのです。

 自分や他人に対しても一貫的なイメージを持つことができず、その場その場の他人の言動に一々過剰に反応し、極端に一喜一憂してしまいます。そのような対人関係では過度なストレスが生じ、精神的にも疲弊していくのです。その結果、自分を見失ってしまいます。

 

衝動行為に至ることも

 境界性パーソナリティ障害の特徴の1つに、過食やリストカット、過料服薬・飲酒、浪費(買い物による)、性的逸脱行動などの衝動行為があります。

 衝動行為は見捨てられ不安をかき消すための対象方法として用いられています。

 事実、リストカットなどの後には、患者さんから「スッとした」などの意見が効かれます。人によっては「心の痛みを身体の痛みに替えているのだ」と表現する人もいるのです。

 しかし、患者さん自身は自責の念や無念さ、自己嫌悪などの気持ちを抱えているのです。ですから、周囲の人が「どうせ死ぬ気はないのだろう」と軽んじていると、患者さんを追い込んでしまう結果になることを知っておく必要があります。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

 

 対人関係の不安定さ、「見捨てられ不安」、年齢相応の社会的役割を持てない(同一性障害)などの特徴があり、リストカットなどの衝動行為に走る場合もあります。

 

感情・行動が不安定に

例えば、機嫌よくはしゃいでいたかと思うと、いきなりどっと落ち込んだり、手放しで褒めていた相手をあるきっかけで急にこきおろしたりします。また、自分の思い通りにならなかったり、辛いことがあると、衝動的な行動(リストカット、過料服薬・飲酒、暴力など)に走りやすいのです。感情の持ち方、人との関わり方、行動のとり方など、適切に自分を制御することができません。極端な考え、極端な行動に走ってしまうため、自分を安定させることができず、周囲を巻き込んだり、振り回したりしてしまうこともあります。

 

「見捨てられ不安」がある

 境界性パーソナリティ障害の人は頼っている相手・信じ切っている相手に、自分が見捨てられてしまうのではないかという「見捨てられ不安」が常につきまとっています。このことにより、気持ちが不安定になりやすいのです。

 例えば、友人や恋人に送ったメールがすぐに戻ってこないだけで、「嫌われたのかな」「見放されたのでは」というような極端な考えが浮かび、相手にしがみつこうとします。2歳の子どもが、母親が視界から消えただけで不安になり、母親を追い求めて泣き叫ぶのと同じような状態です。

 相手の些細なふるまいに対し、過剰に反応し、不安になり、その不安から逃れるために過食や過料服薬、自傷行為などを起こしてしまうのです。

 

「確かな自分」をイメージできない

 境界性パーソナリティ障害の根本には、確かな自分をイメージできない問題があります。確かな自分とは、自分はこういう人間だという自我同一性の感覚です。私たちは、自分が置かれた状況や場面が変わっても、自分らしさというものに一貫性があり、その自分らしさを元に振る舞うのです。しかし、自我同一性がしっかり備わっていないと、対象に頼る以外に生き方がわからなくなり、年齢相応の社会的役割が果たせなくなります。その結果、周囲から脱落者のイメージを持たれてしまうのです。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

グループ2-B群の診断基準の続き

 2016627日に言及したDSM-Ⅳの、B群の診断基準の続きです。

※アーカイブから2016627日のジオログは検索可能です

 

1)演技性パーソナリティ障害の診断基準

 過度な衝動性と人の注意を引こうとする広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ以上によって示される。

1.    自分が注目の的になっていない状況では楽しくない。

2.    他者との交流は、しばしば不適切なほど性的に誘惑的な、または挑発的な行動により特徴づけられている。

3.    浅薄で素早く変化する感情表出を示す。

4.    自分への関心を引くために絶えず身体的外見を用いる。

5.    過度に印象的だが、内容がない話し方をする。

6.    自己演劇化、芝居がかった態度、誇張した感情表出を示す。

7.    被暗示的、つまり他人または環境の影響を受けやすい。

8.    対人関係を実際以上に親密なものとみなす。

 

2)自己愛性パーソナリティ障害の診断基準

 誇大性(空想または行動における)、賞賛されたいという欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。

1.    自己の重要性に関する誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、充分な業績がないにも関わらず優れていると認められることを期待する)。

2.    限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想に囚われている。

3.    自分が"特別"であり、独特であり、ほかの特別な、または地位の高い人たち(または団体で)にしか理解されない、または関係あるべきだ、と信じている。

4.    過剰な賞賛を求める。

5.    特権意識、つまり特別有利な取り計らい、または自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待する。

6.    対人関係で相手を不当に利用する。つまり、自分自身の目的を達成するために他人を利用する。

7.    共感の欠如:他人の気持ち及び欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。

8.    しばしば他人に嫉妬する。または他人が自分を嫉妬していると思い込む。

9.    尊大で傲慢な行動、または態度。

※これらはDSM-Ⅳを元に記載しています。現在はDSM-Ⅴとなりました。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

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