境界性パーソナリティ障害①―どのような人?の続きです。
幼児期に確立される「自分」
自己同一性は、幼児期に少しずつ育まれるものです。
生後間もない赤ちゃんは、自分と母親を一体化して捉えていますが、徐々に自分と母親は異なる存在であることを意識しはじめます。そして、不安が生じたときは、母親の側に行ってしがみつこうとします。
このような行動を繰り返すことで自分を支えてくれる母親が子どもの心の中に住むようになり、1人になってもその母親が見守ってくれているという実感を持つことができるようになります。
常に不安や恐怖がある
自分は何者か、自分はどう振る舞えばよいのかわからない境界性パーソナリティ障害の人は、常に不安や恐怖を抱いています。そのため、些細なことで感情が激しく揺れ動いたり、偏った解釈をしたり、極端な行動に走ったりします。
例えば、職場の上司に対し、極端な評価することがあります。自分を褒めてくれた時には、「素晴らしい理想の上司」と褒めちぎっておきながら、報告書の誤字を指摘されただけで、「最低の人間、上司失格」といってこき下してきます。
自己像が不安定な境界性パーソナリティ障害の人は、相手が自分を評価してくれるか、交換を持ってくれるのか、敵意を持っているのかということに、異常に敏感になります。上司の軽い指摘も自分の全人格を否定されたかのように受け止め、見当はずれの怒りとなって表現されてしまうのです。
自分や他人に対しても一貫的なイメージを持つことができず、その場その場の他人の言動に一々過剰に反応し、極端に一喜一憂してしまいます。そのような対人関係では過度なストレスが生じ、精神的にも疲弊していくのです。その結果、自分を見失ってしまいます。
衝動行為に至ることも
境界性パーソナリティ障害の特徴の1つに、過食やリストカット、過料服薬・飲酒、浪費(買い物による)、性的逸脱行動などの衝動行為があります。
衝動行為は見捨てられ不安をかき消すための対象方法として用いられています。
事実、リストカットなどの後には、患者さんから「スッとした」などの意見が効かれます。人によっては「心の痛みを身体の痛みに替えているのだ」と表現する人もいるのです。
しかし、患者さん自身は自責の念や無念さ、自己嫌悪などの気持ちを抱えているのです。ですから、周囲の人が「どうせ死ぬ気はないのだろう」と軽んじていると、患者さんを追い込んでしまう結果になることを知っておく必要があります。
引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012年1月10日
文責:吉本