「境界性パーソナリティ障害②―治療方針は?」の続きです。
ソーシャルスキルを身に付ける
境界性パーソナリティ障害の方達は、自分の気持ちや考えを他人に上手く伝えたり、相手の意見をほどほどに聞き入れたりすることや、ストレスが溜まったときの発散の仕方、気分転換などを要領よく行えない方も少なくありません。こうした技能は、ソーシャルスキル(社会技能)と呼ばれ、私たちが人とコミュニケーションを取ったり、社会生活をスムーズに送る上で欠かせない技術なのです。ソーシャルスキルは、子どもの発達過程において、家族や友達、先生、近所の人などと関わりを持ちながら少しずつ身に付けていくものです。
しかし、境界性パーソナリティ障害の方は、このスキルがしっかりと備わっていませんから、すぐ母親の元に走ってしまうのです。
ですから、患者さんに対しては、いかにソーシャルスキルが身についていないかを理解させて、身に付けられるよう教えていくことが大切です。デイケアなどの場で、集団で対人関係のトレーニングを行うことも一つの方法なのです。
入院が必要なことも
境界性パーソナリティ障害の方は、ソーシャルスキルが十分備わっていないため、ストレスを抱えやすく、抑うつ症状などの状態に陥りやすいのです。うつ状態が強くなり、自殺企図の恐れが出た場合、心身を休める目的で入院させる場合があります。
ただし、境界性パーソナリティ障害の方は、周囲の人たちとトラブルを起こしやすいため、スタッフはよく心得ておく必要があります。
異なるスタッフにそれぞれ全く違った話をして、スタッフ間の人間関係を悪化させたり、主治医や担当看護師に強く依存して、理想化とこき下しを繰り返したり、思い通りにならないことがあると自傷したりすることもあります。
医療機関のスタッフが患者さんの特性をよく理解し、情報交換を密に行って、患者さんのペースに巻き込まれないように注意する必要があるのです。
引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012年1月10日
文責:吉本