2017年4月アーカイブ

 「境界性パーソナリティ障害②―治療方針は?」の続きです。

 

ソーシャルスキルを身に付ける

境界性パーソナリティ障害の方達は、自分の気持ちや考えを他人に上手く伝えたり、相手の意見をほどほどに聞き入れたりすることや、ストレスが溜まったときの発散の仕方、気分転換などを要領よく行えない方も少なくありません。こうした技能は、ソーシャルスキル(社会技能)と呼ばれ、私たちが人とコミュニケーションを取ったり、社会生活をスムーズに送る上で欠かせない技術なのです。ソーシャルスキルは、子どもの発達過程において、家族や友達、先生、近所の人などと関わりを持ちながら少しずつ身に付けていくものです。

しかし、境界性パーソナリティ障害の方は、このスキルがしっかりと備わっていませんから、すぐ母親の元に走ってしまうのです。

ですから、患者さんに対しては、いかにソーシャルスキルが身についていないかを理解させて、身に付けられるよう教えていくことが大切です。デイケアなどの場で、集団で対人関係のトレーニングを行うことも一つの方法なのです。

 

入院が必要なことも

 境界性パーソナリティ障害の方は、ソーシャルスキルが十分備わっていないため、ストレスを抱えやすく、抑うつ症状などの状態に陥りやすいのです。うつ状態が強くなり、自殺企図の恐れが出た場合、心身を休める目的で入院させる場合があります。

ただし、境界性パーソナリティ障害の方は、周囲の人たちとトラブルを起こしやすいため、スタッフはよく心得ておく必要があります。

異なるスタッフにそれぞれ全く違った話をして、スタッフ間の人間関係を悪化させたり、主治医や担当看護師に強く依存して、理想化とこき下しを繰り返したり、思い通りにならないことがあると自傷したりすることもあります。

 医療機関のスタッフが患者さんの特性をよく理解し、情報交換を密に行って、患者さんのペースに巻き込まれないように注意する必要があるのです。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

4月16日に第2回ご本人さまの会を無事開催することができました。
とても有意義な時間を過ごす事が出来ました。
参加された皆さまありがとうございました。
その模様の一部を公開いたしますのでご覧ください。


BPD家族会 代表 奥野栄子

境界性パーソナリティ障害②―治療方針

 「見捨てられ不安」が強いですから、その不安を解消させることが基本となります。その上で、自分の感情を表現したり、相手に上手く伝えるスキルが身に付けられるように援助する必要があります。

 

不安を緩和させる

境界性パーソナリティ障害の方は自立することに不安を覚えやすいところがあります。依存対象の相手から離れ独り立ちすると、その相手から見捨てられるのではないかという不安を常に抱いているのです。このような不安を取り除いてあげることが、治療のベースになります。それには、相手は些細なことで相手が自分を裏切ったり、見捨てられたりすることはないなど、相手との関係性は一貫していて簡単には崩れないことが理解できるように接してあげる必要があります。

 そのためには、治療者となる医師や心理技術者だけでなく、家族や友人、職場の上司・同僚など、周囲の近しい人達も障害の特徴をしっかり理解しておくことが大切です。そして患者さんの不安が高まり、情調不安定になって怒りをぶつけてきたときも動揺することなく、平常心を持って接することが大切です。

 また、患者さん側も、前述したような不安を引き起こす偏りのある考え方を

する癖(些細なことで見捨てられたてしなうのではないかと不安になってしまう考え方)を認識できるように心がける必要があります。

 

衝動行為を減らす配慮

 自傷行為や過食、暴力、薬物依存やアルコール依存などの衝動行為がみられる場合は、こうした行為に至らないようにすることを治療の第一目標にします。衝動行為が起こる背景には、強い不安や恐怖心、無力感、孤独感があります。

 周囲の人は、境界性パーソナリティ障害の患者さんが起こす行為そのものを批判するのではなく、患者さん自身がその行動を通じて何かを訴えようとしている心理に気を配る必要があります。「やめなさい」という制止の態度は患者さんを追い込む結果になってしまいます。

 

母子関係に逃げ込ませない

 周囲の人は、境界性パーソナリティ障害の治療では、現在起きている職場や友人関係の問題と対峙させることが肝要です。

 患者さんの多くは、家庭の外での心理的問題を、母親に癒してもらおうとしますが、必ずと言っていいほど上手くいきません。結果的に「母親の育て方が悪かったから、こんな人間になった」と母親を責めるようになります。

 そして、些細なことで互いに攻撃しあうようになり、べったりとした母子関係を作るようになってしまいます。牛島先生は「ドツボにはまった二者関係」と呼んでいるものです。まず、このような母子関係を解消させることが重要となります。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

境界性パーソナリティ障害―どのような人?のこれまでのおさらいです。

 

境界性パーソナリティ障害の特徴

特徴1

「見捨てられ不安がある」

不安から逃れるために、あるいは、相手の気を引くために、リストカットやODなどの衝動行為に及ぶことがある

特徴2

感情や行動が不安定

特徴3

「確かな自分」がイメージできない

年齢相応の社会的役割が果たせない(仕事や学業が続かないなど)

 

両極端な考えを持ちやすい

例:職場の上司の場合

同じ上司に対して

良い面

自分の仕事を評価してくれた

素晴らしい上司、理想的な上司」と持ち上げる

悪い面

遅刻をたしなめられた

最低の上司、上司失格」とこき下ろす

 上司は部下を褒めることもあれば、注意することもあります。ですが、境界性パーソナリティ障害の人は、ひとりの人格をトータルでみることができないのです。人は、状況や場面によって様々なふるまいをしますが、すべてをひっくるめて一人の人間なのです。しかし、境界性パーソナリティ障害の人はこのことが理解できていません。

 

背後に不安や恐怖がある

不安・恐怖

根っこには不安や恐怖があるため...

→気分の上下動が激しい

→つらくなると極端な行動に及ぶ

(自傷行為など)

→両極端な考え方をする

身の回りで起こる些細なことで、ひどく動揺してしまいます。根本的な治療に繋げるには、不安や恐怖を取り除く必要があるのです。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

 

2月12日に第1回ご本人さまの会を無事開催することができました。
参加された皆さまありがとうございました。
その模様の一部を公開いたしますのでご覧ください。


BPD家族会 代表 奥野栄子

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