2018年5月アーカイブ

同一性拡散症候群とは

境界例患者に特有の精神状態を表す。
自我同一性の確立がなされておらず、自分の存在意義や価値を確信できません。
そのために、自己に対する空虚感や無価値感に苛まれている状態です。

6つの症状
1、自意識過剰
2、対人的距離の失調
3、勤勉性の喪失
4、選択の回避と麻痺
5、時間的展望の拡散
6、否定的な同一性の選択

同一性拡散は、青年期においては誰しも一時的に体験するもので、
自己と社会の関係を再構成して新たな自分を作り出す基盤となります。
しかし、この状態が一時的なものではなく、成人してもずっと続いてしまい、
自分の周囲の人々や社会が示す規範や価値を受け入れられず、対人関係
における不安定性や感情の起伏の激しく、自己に対する空虚感や虚無感
に苛まれ続けます。

そのため、境界性(BPD)は大人になりきれない状態で
未熟型とも言われます。

さらに、

パーソナリティ障害は特徴ごとに9つに分類されていますが、
近日では明確に分類できなくなってきており、
症状が幾つも重なりあっている状態で明確に区別できなくなっていると
言われています。

一昔前は反社会性パーソナリティ障害・演技パーソナリティ障害・
自己愛性パーソナリティ障害は共通点が多くみられるとされていましたが、
最近では特に境界性パーソナリティ障害は
回避性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害が
入り混ざっている状態に変化してきたと言われています。
そのため、ただでさえ診断がつけられない状態だったのに、
和にかけて増々診断がつけずらくなってきているのです。

さらに、
精神疾病との関連には、以前から言われていたうつ病や摂食障害に加え
最近の見解では成人の発達障害との関連について注目されています。

うつ病・摂食障害・大人の発達障害・ひきこもり・二型双極性障害に
みられる衝動性や気分の浮き沈みなど、これらは境界性パーソナリティ
障害と関連していることも分かってきました。

つまり、境界性パーソナリティ障害は何らかの精神疾病に
併合して複数のパーソナリティ障害をあわせもつ状態と考えられる
ようになってきました。
最近の家族会の参加者も様々であらゆる精神疾病の問題を抱えている
方々が参加していますし、診断をつけられていない方でも、
感情の処理が上手くできず対人関係(特に家族やパートナーとの関係)に
問題が生じていることでお困りになり家族会に参加いしておられます。
または、これまでBPDと診断されてきていたのに、「大人の発達障害」と
診断されたということで、BPDでは無かったと思い込んでしまい
参加しなくなってしまうのですが、そのあとどうにもこうにも対応に困り
家族会に再度参加される方も多くいらっしゃいます。

感情の激しさはどちらかというと発達障害はそんなに激しくはありません。
激しい感情で対応にお困りの場合は二次的に潜んでいるパーソナリティ障害
の症状が出ている可能性があります。なので、「感情調整が困難で周りが
疲弊し対人関係が崩壊しつつある」と感じている方は、当家族会にご参加
いただければと思います。
*ご家族の立場の方であれば定例会にご参加下さい。
*当時者の立場の方は「回復を希望している方のみ対象」ご本人さまの会に
 ご参加下さい。

今後、診断基準そのものが変化する可能性があります。
よって、当家族会も「単独の境界性パーソナリティ障害」
の家族会と称するよりも、精神疾病につきものの障害が
パーソナリティ障害となるので、あらゆる疾患に生じる
「衝動性・感情の浮き沈み・感情、行動、考え方のアンバランス」などに
対応できる「支援を提供」してゆくことが求めらることになると思います。

思考のバランスが崩れている状態で診察すると「発達障害」
衝動性が高い状態で診察すると「双極性二型」
感情が落ち込んでいる状態で診察すると「うつ病」
妄想概念が強く出ている時に診察に行くと、
「スキゾイド(統合失調型パーソナリティ障害)」や「統合失調」と
診断されます。

つまり、その時、その時の状態によって診察にいくと診断名が(変わる)
ります。
病院が変わる度に「病名が変わる」のはおそらくその理由によります。

診断がどんどん変わりつつあるので、診断名だけに囚われてしまうと
迷路にはまり込んでしまい、対応が遅れてしまいます。
今の症状や状態に目を留めて治療し対応することが治療の近道であることを
知っておいてください。
対人関係を築くことが難しいのがこの障害ですので、医師とのトラブルも
日常茶飯事です。気に入らないと辞めてしまいたくなる衝動を落ち着かせる
役割は家族の存在は欠かせません。
医師と家族と当時者がチームとなって治療に取り組むことこそが
治療を成功させることが可能となります。

上記の障害や疾病の共通の特徴である、「感情の調整の困難」な状態や
「歪んだ捉え方をする考え・行動・感情」の在り方など、
その一人一人の当時者の「クセ」から生じるさまざまな問題を把握し
調節できるようにしてゆくことが「治療の鍵」なのです。

BPD家族会
心理カウンセラー
奥野栄子

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