2019年5月アーカイブ

体罰による虐待も言葉の虐待もどちらも脳の発達に影響を与える


幼児期に虐待ストレスを受け続けると、脳の中にある感情の中核である
扁桃体が異常に興奮し、副腎皮質にストレスホルモンを出すよう指令を出す。
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そうすると、外レスホルモンが過剰に放出され、脳にダメージを与える。

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              NHK解説委員室 「解説アーカイブス」から引用
虐待の種類
1、身体的虐待
2、性的虐待(妻が拒んでいるのに無理矢理性行為を求めることや全く拒絶する
       ことも性的虐待に含まれます)
3、ネグレクト
4、その他 過干渉も含む。

加害者の意図の有無関係なく、相手にとって有害かどうか。
心的問題が生じていなくても、目立った外傷や精神疾患が無くても、
「行為自体が不適切であれば」マルトリートメント(不適切な関わり)
と考えます。
精神疾病の原因の少なくとも一部は、脳の発達段階で負荷がかかることに
起因するようです。さらに、遺伝的要因と逆境的体験の種類やその被害を
受けた時期に関係すると考えられているようです。
つまり、虐待の影響は、「段階的に連鎖していく」と仮説が立てられている。

「言葉による虐待(暴言虐待)」脳に与えるダメージ。
母親から「ゴミ」と呼ばれたり、「お前なんか生まれてこなければよかった」
というような言葉を浴びせられたりするなど、物心ついたころから暴言に
よる虐待を受けた被虐待者たちを集めて、脳を調べた結果、スピーチや言語、
コミュニケーションに重要な役割を果たす、「大脳皮質」の側頭葉にある
「聴覚野」の一部の容積が増加していた。
暴言の程度が深刻であるほど、影響は大きかったと報告されています。
また、両親の学歴が高いほど同部の容積はむしろ「小さい」ことがわかっている。

ニューロン同士の連結の網の目狀担っていて、一つの神経細胞が壊れ、
ある経路の伝達に支障が生じても他の経路による代償が十分に可能になります。
しかし、あまりにも過剰なシナプス形成が行われると、一つの刺激が周囲の
不特定の神経細胞に伝わるため、不必要な全体的な興奮を引き起こし、
やがて脳代謝に負荷がかかるようになってきます。

その結果、エネルギーの消耗が激しくなり、むしろ神経伝達の効率が低下
するリスクが高まります。
生後1年目から思春期さらに若年成人の頃までに。過剰な神経回路網の
刈り込みが行われ、神経伝達の効率が向上するようになります。
不必要なニューロン同士の連結が減少し、ミエリン鞘(信号伝達に必要な
絶緑体)によるミエリン化が進行していく。
ところが、子供時代に言葉の暴力を繰り返し浴びることによって、
シナプスの刈り込みが進まず、雑木材のような状態になってしまう。
人の話を聞き取ったり、会話したりする際に、その分、余計な負担が
かかることが考えられた。「生まれてこなければよかった」「死んだほうが
ましだ」など、暴言を受け続けると、聴覚に障害が生じるだけでなく、
知能や理解力の発達にも悪影響が生じることも報告されています。
言葉の暴力は、身体の表面には傷をつけないけれど、心や脳に傷つけることを
見過ごしたり、多目に見ることが内容にしなければなりません。

「激しい体罰の脳への影響」
小児期に過度の体罰を受けると、素行障害や気分障害といったさまざまな
精神症状を引き起こします。過度の体罰の脳への影響はこれまで解明されて
いませんでした。
一般に体罰は「しつけ」の一環と考えられていますが、驚くべきことに
「体罰」でも脳が打撃を受けることがわかってきました。
厳格な体罰(頬への平手打ちやベルト、杖などでお尻を叩く行為)を長期
継続的に受けた人たちの脳は「前頭前野」の一部である右前頭野内側部の
容積が平均19、1パーセントも小さくなっていたそうです。
前頭前野の一部で、感情や思考をコントロールし、犯罪抑制力に関わって
いるところです。
さらに、集中力・意思決定・共感などに関わる右前帯状回も、16、9パーセントの容積減少が見られました。
物事を認知する働きをもつ左前頭前野背外側部も14、5パーセントも減少して
いたと報告されています。
これらの部分が障害されると、うつ病の一つである感情障害や、飛行を繰り返す素行障害などに繋がると言われています。
体罰と「しつけ」の境界は明確ではありません。そのため、親は「しつけ」の
つもりでも、ストレスが高じて過剰な体罰になってしまう。これが最近の虐待
数の増加につながっていると言われています。

両親のDVを目撃することによる脳への影響
夫婦間のDVを目撃させる行為が心理的虐待の一つに当たります。
DV暴露を受けた子供にはさまざまなトラウマ反応が生じます。
*夫婦間が悪い場合や嫁姑の問題も含まれます。
知能や語彙理解力にも影響を及ぼします。
悪い影響が一番出やすい時期は11歳〜13歳。
さらに、DVには殴る・蹴るなどの身体的暴力だけでなく、罵倒するなど
言葉の暴力も含まる。こうした「言葉によるDV」を目的してきた人のほうが
身体的暴力より、「脳のダメージが大きかった」と報告されています。
視覚野の一部で夢や単語や認知に関係する舌状回の容積が、身体的暴力を
受けた人は3、2パーセント減少・言葉の暴力は19、8パーセント減少
と6倍にもなっていました。
複数のタイプの虐待を受けた場合は、脳へのダメージより複雑になり、深刻化
します。

身体的虐待・精神的虐待とトラウマ反応と寒冷を調べると、DV目撃が
深刻な影響を受けることが明らかになりました。
解離症状を始め、トラウマ反応が最も重篤なのが、DV目撃と暴言による虐待」
の組み合わせです。
身体的虐待やネグレクトを受けた人よりも、親のDVを目撃し、自分も言葉で
ののしられた人のほうが、トラウマ症状が重篤であった。

*追記コメント
 bpdご本人は幼少期にこうした体験をしたことで苦しんでいる方も
 いらっしゃいますし、同時に、当事者が成人することで、パートナーや
 親や自分の子供に暴言を吐き、パートナと争い、その姿を子供に見せる
 ことで虐待は引き継がれて行きます。また、パートナーは被害意識が
 強くなります。しかし、自分が被害者であっても、
 親として子供を守る義務があることを忘れてはなりません。
 パートナーや親も暴言を日々浴びされているため、
 身動き取れない状況かもしれないので、そんな時はどうにもならないと
 諦めるのではなく、自分一人で何とかしようとせず、
 専門家やソーシャルワーカーなど周囲の力を借りることが大事です*

主に、幼児虐待への暴露が脳に及ぼす影響や愛着形成障害の神経基盤に
関する知見を友田明美先生は概説しています。
人生の早期、幼い子供が晒された想像を超える恐怖と悲しみ、虐待体験は
子供の人格形成に深刻な影響を与えてしまうことが一般社会にも認知されて
来ています。癒されることのない深い心の傷(トラウマ)を抱えたまま
さまざまな困難が待ち受けている人生に立ち向かわなければならなくなります。
トラウマは子ども達の発達を障害するように働き、それによって従来の
「発達障害」の基準に類似した症状が現れる場合があることもわかってきました。*追記注解 現在、bpdは発達障害と診断されているのもそれと深く
関連している可能性を感じています*
子どもたちの発達の特性を見守るのが周囲の大人の責任であることを
再認識しなければならないかもしれません。

しかし、脳の傷は決して治らない傷ばかりではなく、環境や体験やものの見方
や考え方が変わることで、脳も変化します。
特に子どもの脳は発展途上なので、可能性という柔らかさを持っているので、
早いうちに手を打てば回復する見込みは十分にあります。
そのためには、専門家によるカウンセリングや解離に対する心理的な治療
トラウマに対する心のケアを慎重に時間をかけて行ってゆくことを友田先生は
述べています。

トラウマによる傷つきが回復するのに必要なことは、「子ども」でも「大人」
でも、基本的に同じです。
安心・安全な環境・自分に起きていることの理解(心理教育)過去の体験と
感情を安全の場で表現することです。
健康に生きるためのライフスキルを習得することが重要なのです。
内的世界を表現することによる自己治癒力の活性化、必要に応じた薬物療法も
有用とされています。

トラウマと関係が深いと言われる「慢性疲労症候群」の成人患者に認知行動
療法がオススメです。前頭前野の容積が増加すると報告がされています。
脳の可能性、復元する力を持つ柔らかさがそれを可能にしているのです。
だからこそダメージからの回復は可能と考えられています。
ストレス耐性が回復することも報告されています。

人生の最初期の置ける愛着形成、信頼の形成が人間にとって決定的に
重要であることの認識が広まります。

これらの脳の構造を知ることで、生まれてくる子供だけでなく、
親になった者達の困難さにも寄り添うことに繋がると友田先生は述べています。

親たちは容易に支援を受けることができず、ますます深みにはまってゆく
世代となっています。
養育者である親を社会で支える耐性は、いまだ乏しいのが現状です。
そう意味では、虐待を減少させていくためには、子どものみならz親たちとも
信頼関係を築き、根気強く対応してゆくことから始める重要性を述べて
います。

子ども時代に虐待を受けた被害者が、親になると子どもに虐待を行う傾向
が指摘されています。
*追記コメント
前半の内容では、虐待している親の脳が縮小しているという文面に注目
できます*
被害者のうち、自分の子どもに対して日常的に虐待する者が3分の1いると
見積もられています。

*追記コメント
虐待されたと言い続ける当事者の親やパートナーも
実は子供の頃、身体に影響がない虐待を受けている可能性があります。
虐待は連鎖すると言われています。まずは自分自身も安全や安心感が
全く感じられず、恐怖に支配されていて、感情がコントロールできない状態に
気づいてください。ご自身を大事にすることから気づきましょう。
周囲が気づいてくれるまで、諦めずにSOSを送ってください*

bpd当事者だけがトラウマを抱えているのではなく、もしかしたら、
「あなたも」気づいていないトラウマを抱えているのかもしれません。
その連鎖を無意識に子どもに向けてしまっている場合があるのです。

それは、誰も悪くありません

                     参考資料 友田明美教授




 





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