「あなたは何を考えていたのですか?」という質問を、あなたも自分の愛する人に何度も何度も聞いたかもしれません。人を当惑させる行動、感情的なリアクション、対人的失策、自分が何者かについての多くの疑念のため、周りで見ている人はBPDをもつ人の生き方に仰天してしまいます。調整不全の最後の領域...認知の調整不全も人それぞれ、異なるときに、異なる形態をとる可能性があります。
一つの形態として、認知調整不全の人は自分の注意を制御することに大いに苦労します。あなたが何かについて本当に感情的になってしまった時のことを思い出してください。誰かと話そうとしても、テレビを見ても、その内容に集中できなかったのではないでしょうか。感情は誰にとっても集中力を妨げるものであるなら、BPDをもつ人の巨大な感情はいっそう集中困難を引き起こします。
それゆえにBPDをもつ一部の人(すべてではありません)は、私たちが解離と呼ぶもの(ゾーンアウトする、ぼんやり、上の空といった状態になる)を自動的に起こすかもしれません。解離する人はしばしば、極端な感情的リアクションを誘発するようなことがあると解離します。何か苦痛なことを話す、苦痛な出来事の記憶を呼び覚ます場所に行く、などです。リストカットなどと同じように、解離は強烈な感情的経験から解放してくれます。
BPDをもつ人は妄想状態になるときもあります。通常、パラノイア(妄想)は感情が極端であることと対人的な混沌状態に深く関わっています。切羽詰まると、BPDをもつ人は「他人が自分をひどい目に遭わせようとしている」として、あまりにも疑い深くなるか、怯えてしまい、現実を見失ったかのように見えるのです。しかし、妄想の引き金になったものが消えると(例えば、家族の集いが終わったとき)、妄想も消えます。あるいはBPDをもつ人の全般的な生活ストレスが減少すると、それに伴って妄想も収まっていきます。覚えておくべき大切なことは、妄想は短期間しか続かず、ストレスがそれを誘発しているという事実です。感情が強烈であるために、ストレスの多い状況であなたの愛する人は過度に疑い深くなり得るのです。
これまで調整不全の五つの領域をご紹介してきました。たぶんあなたも、これらの領域が相互作用し、他人の当惑を招く行動が生じる様子がわかってきたのではないでしょうか。彼らがわざと「狂った」行為をしているのではなく、彼ら自身もこのジェットコースターに引きずられているのだという可能性を考察できるようになっているでしょう。感情を強烈に感じることと、感情の調整方法を知らないことが、痛みを和らげるための死に物狂いの行為につながるのです。
弁証法的行動療法は、何が起こっているのかを理解し、激しい感情と後続の行動を調整できるように、あなたの愛する人に力を貸すことができます。弁証法的行動療法の原理のいくつかを採用し、調整不全の五つの領域への理解に基づいて愛する人に反応すれば、あなたもバランスを取り戻し、二人の関係を維持していく方法を見つけることができるでしょう。
星和書店
「境界性パーソナリティ障害を持つ人と良い関係を築くコツ」シャーリ・Y・マニング著