精神分析は最初フロイトによって提案され、その後彼の多くの弟子たちによって長年にわたり洗練され、拡張されたものです。この種の理論はある種の心理的問題にとっては非常に有効ですが、自傷を行なっている青年期の子どもたちにとっては有効性が証明されませんでした。そのため別の援助方法を探してきました。
弁証法的行動療法(DBT)と呼ばれる治療法を学び始めたとき、それがずっと望んでいた答えとなりうることを知りました。
DBTには自傷に効果的に効率よく取り組める次のような長所があります。
1、DBTは問題行動を直接ターゲットとする
DBTは「子どもが自傷を行うとき、その行為が本人にとってメリットとなる何をもたらすのか」ということに直接目を向け、同じ目的に役立つ他の、より健康的な方法を提供します。自傷は、直感的にはそう思われないかもしれませんが、明らかにある目的に役立っています。子どもが自傷を行う瞬間、それは本人の気分を身体的にではなく感情的に改善させるのです。
2、子どもは自傷を有効と感じる一方で、家族とセラピストはそのような行動はやめてほしいと望んでおり、DBTは、両者のこのような対立が変化を妨げる主な障害となっていることを認識する
DBTにおける「弁証法」とは、皆さんが変化に向けて取り組める場所を、白か黒かという両極端なところではなく、その二極間の中間地点を見つけるための方法なのです。皆さんは、子どもの心の痛みと、それを和らげようという子どものニーズを皆さんが理解していることを子どもに伝えます。そしてもう一方では、その痛みを軽減させる新しい方法を子どもに与えることで自傷をやめる方向へと子どもをそっと後押しするのです。
次回以降2人の子どもの例を紹介します。彼らの例はこの二つのポイントを具体的に示しています。
次回は「アイシャ ー 複数の視点を織り込んで」を紹介します。
「自傷行為救出ガイドブック ー弁証法的行動療法に基づく援助ー」 マイケル・ホランダー著