ここで、極度に感情が脆弱であるとはどのような感じなのかを理解するために行っていただきたいことがあります。人生で物事がうまくいってなくて、多くの感情を経験していたときについて考えてみてください。
私に関して言えば、数年前のある時、働いていた会社が倒産しかけていて眠れなくなり、関係者も皆動揺していました。私の感情は瀬戸際にありました。その時、友人が亡くなりました。その時点で私の経験していた全感情が肌を突き破って出てきそうな気がしました。もう一つ何かが起きたら、感情で爆発しそうだと身体で感じていたのです。私は同情や理解を望みませんでした。なぜなら、誰かが何か親切なことや理解あることを私に言ったならば、自分がバラバラになってしまいそうで怖かったのです。どのような理由であっても、誰に対しても、簡単に腹が立ってしまいました。未来についての恐れがあり、友人のことでは悲しく思っていました。スポンジのように私は感情で膨れ上がっていました。その多くの感情の真っ只中にあったある日、あらゆる感情的苦痛のせいで皮膚が文字通り痛んでいたとき、私はこれが、BPDをもつ私のクライアントでは毎日の人生における経験なのだと認識したのです。
次のようなイメージも試してみてください。感情的脆弱性の奴隷になった状態とは、今すぐ出かけなければならないのに、車の鍵が見つからず、気も狂わんばかりになっているような感じです。鍵を求めてあらゆる場所を探して、どんどん気がおかしくなっています。次に何をすべきかわからず、今にも爆発しそうに感じています。これが内側から見たBPDです。
現実には、BPDをもつ人にとっては感情はあまりに激しく、あまりに簡単に火がつき、あまりに長引くので、彼らは惨めに感じています。時にBPDをもつ人は感情を抑える方法を発見します。自傷、自殺企図、飲酒、薬物使用、過食、下剤使用、その他の問題となりうる行動は、感情を急速に静めて安堵感をもたらすという機能があるのです。このような行動は瞬間的には苦痛を緩和するという事実があるため、やめさせることは非常に難しいのです。
ここに注目すべき点があります。世の中には感情的に過敏な人がたくさんいます。私たちは他人の感情を容易に経験できるので、通常とても共感的です。けれども、私たち全員がBPDを持っているわけではありません。ですから、感情的であることは、BPDを構成するうえで要求される唯一のものではないのです。もう一つ、非承認的な環境というものがあります。
次回「非承認的な環境」を紹介します。
「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著