2020年5月アーカイブ

承認を実践する

承認にはさまざまな方法があります。あなたはある人の思考、感情、行為、観点、能力を承認することができます。

 

思考:「それについて気をもむのは理解できます。間違いなく気がかりなことです」

感情:「別れが悲しいのは当然です。絶望的になりますよね」

行為:「そこで立ち上がって口論する代わりに、彼から歩き去った理由は理解できます」

観点:「もちろん、今それについて話さなければならないわけではありません」

能力:「あなたにはこれができると私にはわかっています。絶対にあなたには能力があります」

 

承認が必要であることを認識できるようにするために、あなたの愛する人との最近の経験について考えてみてください。その人の感情が高揚していて、もし承認を行っていたら感情を静められたかもしれないようなやりとりに焦点を当ててください。

空欄に、その経験がどのようなものであったのか思い出すのに十分なだけ、その状況について記述し、その状況で仕えたであろう各タイプの承認の言葉を書いてください。

 

どのような状況があったか

                                                 

                                                 

 

愛する人の感情が高揚しているとどうしてわかったか

                                                 

                                                 

 

承認の例。私は次のように言えたかもしれない。

    思考:

    感情:

    行為:

    観点:

    能力:

 

あなたがボーダーラインの行動に異なる反応をすると、あなたの愛する人も異なるリアクションをします。それにより彼らの典型的な行動パターンが危機を生み出し、有害かつ自己破壊的で、あなたを消耗させる行動へと陥っていく可能性はずっと少なくなります。



「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著

あなた自身と他者を承認する

私たちは皆、悩んでいるときには承認を必要します。BPDをもつ人の家族は、たぶん他の家族よりも、お互いからの承認をたくさん必要とします。人間関係の中での承認を研究している科学者のグループがいくつかあり、承認という技術ですべての関係がよりうまくいくことを発見しています。BPDではない他の家族を承認するためにも、同じ6つのレベルの承認に従ってください。

 

 あなた自身のことも承認してください。特に愛するBPDをもつ人と一緒にいる状況では、そうしてください。あなた自身が調整不全になってきていると認識したら、最初の3つのレベル(意識し続ける、鏡のように映し出す、読心術)は効果がないでしょうし、とても不自然になってしまいます。けれども、レベル4とレベル5は自分自身にも適用できます。あなたの反応を見つめ、あなたの歴史、生物学的特徴、現在の状況を考えて、あなたの行動がどう理に適っているのか、特定してください。自分自身に、「あの子を大切に思えばこそ動揺しているんだ。親なら当然動揺する」と言うのは、あなたの行動を正常なこととして扱う一例です。このような手間をかければ、あなたの感情をより調整された状態で維持できるでしょう。


次回は「承認を実践する」を紹介します。

 

「境界性パーソナリティ障害を持つ人と良い関係を築くコツ」シャーリ・Y・マニング著

複数のレベルの承認を一緒にする

ここで、最初のシナリオをまとめることにしましょう。私たちの愛するBPDを持つ人をレイと呼ぶことにします。朝、レイがあなたに電話をかけてきます。彼は本当に動揺しています。彼の声は大きく、今にも泣きだしそうです。

 

レイ: 昨晩したことが信じられないんだ。ひどい一日でね。ボブと僕はとっても深刻な問題を抱えていて。僕は家に帰れなかったから、バーに行ったんだ。[調整不全が増している]

 

あなた: そうなんだ、レイ。君とボブは良くない状態で、それで家に帰らずにバーに行ったんだね。[レベル2]  何が起こったのか話してくれよ。[レベル1]

 

レイ: (もっと大声で)何が起こったか話すよ。ボブと別れてやけになって知らない人を連れて家に帰ったんだ。酔っ払って意識がなくなって、何が起こったのか覚えていないんだ。

 

あなた: それはひどいね。[レベル5]  昨日の夜にやってしまったことを心配しているんだね?[レベル3]  性病を心配しているのかい? それとも、ボブがどう思うかを心配しているのかな? 僕ならたぶん両方とも心配だろうね。[レベル5] 

 

レイ: もう、そのことは話したくないよ。話すだけでムカムカしてくる。

 

あなた: 話すのは辛いことだよね。[レベル5]  今はたくさんの感情を経験しているに違いないな。[レベル3]  これまでにも人にひどい目に遭わされたことを知っているし、そのせいで僕に話しづらいんだね。[レベル4]  本当に僕に助けてほしくないのかい?

 


 次回は「あなた自身と他者を承認する」を紹介します。

 

「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著

レベル6:徹底的な誠実さ

全ての承認で鍵となるのは、誠実であることです。人々が承認しようとしているのを耳にするとき、あらゆる正しい言葉を使っているのですが、声の調子が親のようであったり恩着せがましかったりすることが時々あります。レベル6は、その言葉通りの意味です。BPDをもつあなたの愛する人に対して、徹底的に誠実であってください。

   これが本当に難しいであろうことは、疑問の余地がありません。時限爆弾がカチカチと音を立てているときに、自分自身であろうとするのは困難です。大切なのは、他のあらゆる状況において他の誰かに対処するときとは違うやり方で、愛する人を扱おうとしないことです。多くの場合、特に精神保健の分野で、私たちは人々を実際にそうである以上に弱い人として扱います。徹底的に誠実であるとは、承認しようとしている人を「壊れ物扱い」したり、見下したり、内容を落として話したりしないようにすることです。

 

これは言葉により直接的に行うこともできますし、態度で示すこともできます。例えば、私の友人が電話をかけてきて、人生最悪の日(もうすぐ失業する上、帰宅したら子供たちが壁という壁に落書きをしていて、夫は浮気をしているとの確信がある)を過ごしたと言ったならば、「まあ、大変。ひどい話ね。私に何ができるかしら?」と言うでしょう。彼女に救急治療室に行くよう勧めたりはしません。彼女は私の注目と同情を得ますし、私は彼女のことを十分な能力のある人として扱っているのです。

 

ある小柄な(身長150センチ)クライアントがいました。彼女は背がとても高い男性と結婚していて、担当医師も非常に大柄な元フットボール選手でした。この二人の男性は(彼女にとって最善だと考えて)、彼女が動揺しているときに「赤ちゃん言葉」で彼女に話しかけていました。二人は彼女を壊れ物扱いしていたのです。実際、そのような言葉で話したとき、彼女の調整能力は増すことなく、いっそう動揺していたのです。

要するに、レベル6の承認は、愛する人に対して他の誰かに話すときと同様に話すということです。もちろん問題は、あなたの愛する人はしばしば、あなたが関わっているほかの人々ほど有能には見えない(あるいは本当に有能ではない)ことです。しかし、あなたの反応を変えるなら、結果が大きく変わります。人々はあなたがその人に期待するように振る舞うようになります。したがって、ある人を壊れ物のように扱うと、その人は壊れ物のようになってしまうでしょう。有能な人として扱うと、その人は有能になるでしょう。

 

 

次回は「複数のレベルの承認を一緒にする」を紹介します。

 

「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著

 

レベル5:正常なこととして扱う

レベル5は、他の(BPDをもたない)人でも同じ反応をするだろうと相手に伝えるので、とても重要です。BPDをもつ人は、他の人とは違っている(世界の中で異端者である)という経験をずっとしてきています。それを正常なこととして扱うとき、あなたはBPDをもつ人に起こっていることは人間であることの経験であって、同じ状況にあれば、誰でも同じように感じるであろうと伝える方法を見つけているのです。これは非常に強力です。使えそうないくつかの重要な台詞を挙げます。

「私たちの誰にでも、そのように感じる瞬間があります」

「そう考えるのは当然です。あなたのような状況なら、誰だってそのように考えます」

「私もそういうふうに感じるでしょうね」

「それはとても正常な反応ですよね」

「あなたがそうしたのは理解できます。私たちには誰にでも、そういう瞬間があります」

 

これを、レベル4の承認と比べてみましょう。先述の稲妻を恐れる女性に私は次のように言って、個人の歴史に基づいてその女性の嵐への恐怖を承認しました。「あなたが嵐の間、クローゼットに隠れたくなる理由はよくわかります。嵐で家が燃え落ちてしまったんですから。稲妻を見るとひどく不安になってしまうのは至極当然です。あなたの個人的な歴史の一部なのですから。」 彼女の行動を正常なこととして扱うとしたら、私は、「いいですか、嵐は恐ろしいものです。稲妻や雷鳴が発生しているときには、ほとんどの人が何とかして逃げたいと思うものです」のようなことを言うでしょう。これが彼女に独特な反応であるとは言っていないことに注目してください。嵐を怖がるのは完璧に正常なリアクションなのです。

レベル4の生物学に関係した例にも同じことができます。ADHDの人に対しては、「ADHDの人は4時間のクラスの間、注意を払い続けることに苦労します」と言う代わりに、レベル5の承認では、「一度に4時間もの間、同じ話題に注意を払い続けるのはつらいものです」のように言うでしょう。腰の問題を抱えている人には、「背中の椎間板に問題がある人には、4時間のクラスの間中ずっと座っているのは困難です」と言う代わりに、「この椅子は背中や腰に固く当たります」と言うでしょう。違いがわかりますか? 一つ目はその人特定であり、二つ目は人間全般になっています。

 

時には、行動を正常扱いする方法がないこともあります。私は誰かに、「気持ちを傷つけられると人は自殺したくなるものです」 あるいは 「本当にストレスの多い一日の後には、私たちは誰でも身体を切りたくなるものです」とはどうにも言えません。正常でない行動を正常なこととして扱わないでください。それは承認できないことを承認することです。もしBPDをもつ人が自分の行動は承認できるものではないと理解しているならば、行動を正常扱いしようとしても感情を急上昇させるばかりです。このような場合には、レベル4の承認に頼る方が得策です。「今日のような日があると、あなたが自殺を考えることはわかっています。あなたの即座の反応ですね」 や 「嫌な一日を過ごしたときには、あなたはただ何か気分を良くすることをしたいのですよね。あなたにとっては、自傷がそれだったのです」などと言うことができます。

 

次回は「レベル6:徹底的な誠実さ」を紹介します。

 

「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著

 

どの瞬間にあっても、私たちは人生のあらゆる瞬間の総合計であり、ある程度、私たちの行動は意味あるものと言えます。より大きな社会の中では、あまり意味をなさないかもしれませんが、私たちがどのような人間か、人生で何が起こってきたかを考慮すると、それは意味をなすのです。

例えば、ある人は5歳の頃に嵐のさなか自宅が消失してしまいました。彼女の家族は火事ですべてを失いました。彼女が住んでいる場所は、よく夏に稲妻を伴った猛烈な嵐に襲われます。稲妻が光ると彼女はとても不安になり、嵐が終わるまでクローゼットの中に座り込むこともしょっちゅうです。しかしながら、彼女は職業上、嵐の間でも他の人の世話をしなければならないので、現在という観点から見れば、クローゼットに隠れるのは承認し難い行動です。

レベル4の承認を使うなら、「あなたが嵐の間、クローゼットに隠れたくなる理由はよくわかります。嵐で家が燃え落ちてしまったんですから。稲妻を見るとひどく不安になってしまうのは至極当然です。あなたの個人的な歴史の一部なのですから」のように言うでしょう。それから、彼女の行動(クローゼットに隠れる)がもはや役に立っていないことへと話を進めますが、そのような喪失と恐怖の歴史があることが、この瞬間の彼女という人間に影響している、という理解を最初に示したいのです。

 

もう一つのレベル4の承認は、その人自身の生物学的観点からの承認です。私たちの生理的特徴、身体的問題、世界への身体の反応の仕方が、世界に対する私たちの行動的な反応に影響します。例えば、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の人々は、四時間のクラスの最初から最後まで、注意を払い続けることに苦労します。背中の椎間板に問題がある人には、四時間のクラスの間中ずっと座っていることは困難です。これら二つの例は両方とも、生物学的な性質をもっています。このタイプの承認を使う鍵は、その人を病気扱いしたり、その人にどういうわけか欠陥があるかのように聞こえさせたりすることなしに、その人の行動が意味をなす点を発見することです。

例えば、以前バーに行った人の話をしましたが、その人に次のように言うことができるでしょう。「あのバーに行った理由はわかります。嫌な一日を過ごしたときは、アルコールへの渇望が高まりますから。それがすべての始まりだったのです。」

バーに行くのは良い考えだったとも、バーに行くべきだったとも言っていないことに注意してください。私にはアルコールが生理的渇望に与える効果について十分な知識があるので、一つのことが次のことへとつながってしまった理由が理解できるのです。私は会話をさらに進めることができるでしょう。その後に起こったことについての懸念を取り上げることもできます。「アルコールによってまさに抑制がきかなくなってしまうので、飲んだときには誰かとバーを出るようなことが起こりがちなのです。」

 

次回は「レベル5:正常なこととして扱う」を紹介します。

 

「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著

 

私はこれを読心術と呼びます。読心術は、その人があなたに言っていないことについて、ちょっとした仮説をつくりだすことを要求します。これは通常、質問形式で表現するか、正確かどうか質問すると最もうまくいくでしょう。特に、その人がひどく調整不全になっているときにはうまくいきます。

先の例を使うなら、あなたは、「きっと、昨晩の出来事のせいで、性病になることを心配しているんですね。当たっていますか?」、あるいは「二度としないと誓ったことをしてしまったので、ひどく自分自身を責めているのではありませんか?そうでしょう?」と言えるでしょう。

読心術の鍵は、間違ったとしても前向きにならなければならないということです。相手の人は「性病の心配は全くしていません。彼と関係した人たちを知っているんです。彼は大丈夫なんです」と応じるかもしれません。この場合の最善の反応は、よりレベル1(意識し続ける)的な質問でフォローすることです。「そうですか。では、今、あなたが本当に心配しているのは何ですか?あなたが思い描いている顛末というのは何ですか?」のように言えるでしょう。

  次の承認の二つのレベルは非常に強力です。その人の反応を正常なものとして扱うのです。

 

次回は「レベル4:個人史や生物学の観点で承認する」を紹介します。

 

「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著

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