自傷をするとすぐに、これらの子どもたちは落ち着きと安堵の期間を経験します。この安堵感がどれほど長く続くかは個人によっても、それぞれのエピソードによっても異なります。二、三分の短いものから数日に至る場合もあるでしょう。人はこれらの子どもたちと同じくらい絶望すると、たとえほんの短い安堵であれ、カラカラに乾ききった喉にごっくりと飲んだ冷たい水のように感じられます。
■頻度を増してゆく
ルースはこの二年間、週に少なくとも三回自傷をしてきました。これから紹介する会話は、私たちの最初の面談で交わされたものです。
「ルース、あなたは本当に混乱したときにリストカットをすると、いくらかでも気持ちのつらさが和らいで安堵感をえられるんですね。あなたはその安堵感を得るために、自傷の頻度をどんどん増やさなくてはならないことに気づいていますか?」
ルースは答えます。
「ええ、以前は一回自傷をすれば落ち着いた気分になったんです。でも今では、同じように感じるのに十回か十五回は切りつけなければなりません」
鎮静薬に依存する人々と同様、ルースは同じ結果を得るために容量を増やし続けなくてはいられない子どもたちの一人です。おそらく、この現象には生物学的基盤があることでしょう。自傷をするとその瞬間、身体は組織の損傷と痛みへの対処法としてある種の化学物質を放出します(それは実際、鎮静薬と近い物質です)。子どもによっては、身体がこれらの化学物質の最初の量に慣れてしまうことがあるようです。すると彼らは同じ安堵感に達するためにより頻繁に自傷を行う必要があります。
どのように、また、なぜ自傷が子どもによって安堵をもたらす場合と、そうでない場合があるのかは解明されていません。いずれにせよその安堵は、自傷した際に脳から放出される鎮静薬の様な化学物質から得られるものと思われます。私たちは皆、化学物質に対してそれぞれ異なる反応の仕方をします。例えばアルコールに対する耐性が低い人がいる一方、はるかに耐性が高い人もいます。その人の「第一選択」にはいくつもの因子が影響を与えますが、身体の化学的反応も重要な要因の一つです。
◎皆さんの子どもは感情的苦痛を和らげるために自傷をしていますか?
1,子どもは、何度も自傷を行うにつれて、それをエスカレートさせていくようですか・
2,子どもの自傷は依存的に思われますか?
3,子どもが自傷をしたとき、複数の傷がありますか
次回は「自殺防止としての自傷」を紹介します。
「自傷行為救出ガイドブックー弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著