2021年5月アーカイブ

統合失調症 どんな病気?

〇考えや感情がまとまらない心の状態が長く続く病気です。

統合失調症は、脳内の考えや感情をまとめる(統合する)機能が十分に働かなくなる(失調する)状態が長く続き、下記のような症状が現れ、仕事や学業、生活に支障が生じる病気です。ほぼ100人に1人がかかると言われており、特別な病気ではありません。主に10代後半~30代の若い世代で発症し、多くの患者さんが回復しています。
病気の原因はよくわかっていませんが、ストレスや遺伝的素因、生活環境など様々な要因が重なって発症すると考えられています。


〇幻覚、妄想、感情や意欲の減退、記憶力・注意力の低下などが主な症状です。

統合失調症の症状は個人差が大きく、患者さんによって様々な症状が現れます。
特徴的な症状は、幻覚(とくに幻聴)や妄想など本来ないはずのものがあると感じる「陽性症状」、感情や意欲など本来もっている力が弱まる「陰性症状」、記憶や思考、判断などの能力が低下する「認知機能障害」の3種類です。
統合失調症では一般的に病気の初期には陽性症状が前面に現れ、長期化すると陰性症状が目立ってくるという傾向があります。



統合失調症の主な症状

【陽性症状】
幻覚(特に幻聴、妄想、自我障害①―自分の考えが人に知られていると思う「さとられ体験」、自我障害②―誰かに操られていると思う「させられ体験」、思考障害―まとまりのない会話や行動、異常な行動―興奮して大声を上げる

【陰性症状】
感情が乏しくなる、意欲の低下、人との接触を避け引きこもりがちになる

【認知機能障害】
記憶力が低下する、注意が散漫になったり集中することが難しくなる、仕事や家事などの手順がわからなくなる


次回は「統合失調症 どんな治療?」を紹介します。
「統合失調症 患者さんとご家族の方へ」 より

包括的精神医学的評価の重要性 続き

■効果的な生活を送るためのスキルを子どもが自由に発達できるようにさせる

  自傷は、人生の苦痛な瞬間に耐え、効果的に問題解決する子どもの能力を低下させます。私たちは皆、人生が私たちの道程に投げかける困難に、どのように対処したらいいかを知る必要があります。
  自傷は長期的な問題に対する短期的な解決策であり、再発的頭痛に鎮痛薬を飲むようなものです。ほとんど即座に苦しみが遠のきます――そしてホッと安心し始めると、青年期の子どもたちは、感情統制不全を引き起こした問題から目を背け、楽なことばかりに関わるようになるのです。

  15歳のダンと私は、なぜ彼が最近自傷を始めるようになったのかについてもっとよく理解しようとしていました。彼と私は三か月以上一緒に取り組んできていました。
「そう、僕の彼女は本当に嫌な女だった」
彼は言いました。
「あいつは僕の仲間連中が嫌いなんだ。それで、僕がやつらと一緒にあの女の家に乗り込んでいったら、ひどく冷たかった。僕は言ってやったよ、『あばずれ』って。僕らはそのまま帰ったんだ。僕はすごく頭に来てたから、彼女にさよならも言わなかった。よくわからないんだけど、誰かがジャック・ダニエルを一本持ってたんだな、それで僕はその三分の二ぐらいをほとんど一口で一気飲みしたんです」
「おいおい、そりゃ短時間で飲むにはアルコールが強すぎるよ。何を考えていたんだい?」
わたしは尋ねました。
「何も。とにかく、帰宅してから、両親が酒の匂いを嗅ぎつけて僕は捕まっちまった。この件について朝、話をしなくてはならないと言われた。僕には両親が本気で怒り狂っているのがわかったよ。朝、目覚めて怖くなった。両親は僕の部屋へ入ってきて、何が起きたのか話させようとしたんだ。彼らは僕を災厄な気分にさせやがった。僕は慰めてくれるかと思って彼女に電話をしたんだけど、あの女は昨晩のことについて僕を悲しませただけ。僕はすごく頭にきて、あんまり頭に来てたからまともに考えることもできませんでした。」
彼は言いました。
「それと、ちょっと悲しくて罪悪感もあったのかな?」
私は尋ねました。
「う~ん、たぶんそうだと思う。とにかく、僕はお手上げになったもんだから、剃刀を探しにバスルームに行きました。自傷したら少し気分がよくなったけど、そのあとで僕はなんて負け犬なんだろうと考え始めたんだ。」

  ダンの話から分かるように、感情統制不全にどうにか対処しようとして子どもが自傷という短慮な戦略に頼るとき、彼らは自分が対人関係における問題解決の仕方を学ぶには程遠く、衝動的な行動やそれに続くあらゆる困難な結果に陥りやすいままの状態にあります。


■白か黒かの思考

  皆さんはおそらく、皆さんの子どもが白か黒かの思考に陥りやすいことがいかに多いかということにも気付いているでしょう。子どもから見ると、世界は、子どもができることと絶対にできないこと、善と悪、公平なことと不公平なことにきっちり二分されているように感じられるのです。皆さんにとって生活の一部である微妙な違いやニュアンスを、子どもは使うことができません。白か黒かの思考は、青年期の証である一方で、自傷する子どもにおいてはより顕著な特徴となります。しかも彼らが感情統制不全である場合には特に優勢となります。なぜこのようなことが生じるのでしょうか。恐らく、白か黒かの思考、すなわち心理学者が「二分法思考」と呼ぶものは、高い感情的反応性と不承認な環境との間の相互作用の結果です。先にもお話ししたように、私たちは感情的に高揚すると思考が融通にかけ、制限されるようになります。絶対という観点から物事を捉えます。:「私は絶対によくならない」、「私には絶対に友人ができない」、「私は完全に愚かだ」といったように。感情が思考を駆り立て、自分の経験を杓子定規に分類してしまうのです。
  不承認の環境がもたらす結果の一つに、人生の問題は簡単に解決されるべきだ、と子どもが感じるようになることがあります。すると彼らは、自分が躓く問題を他の人々の大半は悩んだりしないように思える。だから自分がもっとよく、もっと強く、もっと賢くなれば自分は人生をうまく生きていけるだろう、と考えます。結果、彼らは人生の複雑な問題を過剰に単純化しがちになります。このように物事を単純化しようとすると、彼らは複雑さを無視せざるを得なくなるのです。
  以上にお話ししたように、自傷には迅速で効果的な対処が必要です。カギとなるのは時間です。最近まで、これらの子どもたちが比較的短期間で意図的な自傷に頼らなくなるよう支援するのに、効果があると明らかになった治療法はありませんでした。しかしDPTは、これらの子どもたちを支援するための金字塔的存在となっています。

「自傷行為救出ガイドブック―弁証法的行動療法に基づく援助ー」 マイケル・ホランダー著

包括的精神医学的評価の重要性

  皆さんの子どもが自傷を行っている場合、皆さんの最初のステップは、専門家


による精神医学的評価を得ることです。それは以下の理由によります。



ほかの心理学的問題を同定する


  先に述べたように、自傷行動は幻聴や強迫性障害といったほかの心理学的問題


や精神疾患と一緒に生じることがあります。自傷を行う青年期の子どもたちは、気


分障害(うつ病など)からさまざまな形態の行為障害やパーソナリティ障害に至る


まで、幅広い診断カテゴリーに該当することが研究者たちによって明らかになりま


した。専門家による包括的な評価を受けることで、皆さんの子どもがほかの問題に


苦しんでいるのかどうかを判断するのに役立つことでしょう。



自傷が自殺思考につながることを防ぐ


  第二に、自傷行動と自殺行動との間には明らかな関連があります。とはいえ、


私はこれまで述べてきた自殺についての論点を否定しようとしているわけではあり


ません。これまで説明してきたような方法で自傷を行う子供たちは自分の命を終え


てしまおうとしてこのような行動をとっているのではなく、彼らは、自傷を用いて


私が説明してきた機能の一つを実行することと、自分の命を終えようとすることを


ほぼ常に明確に区別します。包括的な評価を受けることで、皆さんの子どもが感情


を鎮めるために自傷を行っているのか、それとも自殺志向なのかを判断することが


できます。


  子どもが自傷を止めるのを支援することが、子どもが将来自殺志向になるのを


防げる場合もあることも、皆さんは知っておいたほうがよいでしょう。私は、不必


要に不安を募らせようとするつもりはありませんが、自殺目的でない自傷(たとえ


ば、感情をコントロールするために用いられる意図的な自傷)が、自殺の試みと関


連することが、現在の研究ではわかっているのです。



1,自傷している期間が長くなればなるほど、その人が自殺を試みる可能性がより


  高くなる。


2,自傷を行うときに痛みを感じない人は、痛みを感じる人々よりも自殺を試みる


  可能性が高い。


3,複数の方法を用いて自傷を行う子どもは、単一の方法しか用いない子どもたち


  よりも自殺を試みる可能性が高い。



  これらの記述のどれかが皆さんの子どもに当てはまるように思われたなら、で


きるだけ早く専門家による介入を求めましょう。



次回も「包括的精神医学的評価の重要性」の続く部分をご紹介します。



「自傷行為救出ガイドブックー弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著





ロビン:強迫性障害

  ロビンが診察室に入ってきたとき、最初に私が気付いたことは、彼女の両腕と


両脚にある赤い傷跡でした。彼女が自分の体を突き、その傷が癒えるのを許さずに


いたということはすぐに明らかになりました。2,3分やり取りをしたのち、私たち


は本題に入りました。



「私は、あなたの両腕と両脚の傷に気付かずにはいられなかったんだ。何があった


のかな?」


私は尋ねました。


「どうかしてますよね、自分でもわかっているんです、でもいったん突き始めると


止められないんです。絶対それを完璧にしなければならない、という考えが頭の中


に浮かびます。自分がしていることなのに、途方に暮れてしまうわ―― 浴室で鏡


を見ながら自分の体をついて、何時間も過ごすことがあります。自分がしているこ


とをコントロールできないと思うと、ゾッとします。」


「あなたは、それを絶対に、徹底的にやり遂げなければならない、という考えの奴


隷になっている感じがしますか?」


私は尋ねました。


「まさにその通りです!」


  強迫性障害がある人は、ある考えに縛り付けられてしまい、しばしば強迫的で


反復的な行動を通してその考えを満足させなければなりません。その行動をとらな


いと、極度の恐怖と心配の感覚を生み出します。中には、強迫行動によって自分の


時間を何時間も取られ、宿題を終えられなかったり、その強迫行動が通常の社会生


活を送る妨げとなる恐れがある子供もいます。


  強迫的あるいは儀式的行動の一種に、皮膚を突くことがあります。ロビンの説


明にもあったように、これらの子どもたちは一旦その儀式を始めると、それを成し


遂げるまで、自分の意思で止めることが極めて困難です。その儀式的行動を駆り立


てるものは、強力な恐怖感が伴う恐ろしい考えであることがしばしばです。例え


ば、もし自分がその行動を完遂しなければ、何か恐ろしいことが大切な人に起こる


に違いない、といったことです


  強迫性障害は、子どもと環境因子との相互作用によって引き起こされる心理学


的障害というよりも、むしろ生物学的基盤の病気です。子どもの自傷がこのパター


ンだと思われる場合には、認知行動療法と薬物療法の組み合わせが最善の治療コー


スとなるでしょう。


  自傷が皆さんの子どもにどのように役立つのか、その役割を理解することは、


治療においてどの問題をターゲット行動とすべきか、苦痛な感情に対処し問題を解


決するために子どもに欠けているのはどのスキルかを皆さんと子どものセラピスト


が理解するのに役立つでしょう。治療の主な目標は子どもがそれらのスキルを獲得


し、自傷がその寄与的役割を果たさなくするようにすることです。



次回は「包括的精神医学的評価の重要性」をご紹介します。



「自傷行為救出ガイドブックー弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著




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