2021年6月アーカイブ

「ジャックを失いそうなの!間違いないわ。あまりにつらくて耐えられないの。彼を失ったら生きていけないわ」

  これはダナの姉がある晩十一時に電話に出たときにダナから聞いた話でした。そして午前一時と最後は午前四時にも。ダナは、日中に数回夫に対して大声を上げ、浮気をしていると責め、泣き、自殺すると脅迫してしまったので、夫を失いかけていると信じ込んでいました。姉のゲイルは、ジャックはダナを愛しているし、ダナを捨てたりはしないと言って、ダナを安心させようとしました。ほかの話題で気を紛らわそうともしました。妹を落ち着かせてくれそうなアドバイスは片っ端から伝えました。けれども、ダナは渦巻の中にぐるぐると落ち込んでいき、その渦は彼女をどんどん深い絶望へと引きずり込むのでした。ダナはどうやって脱出したらよいのかわからず、ゲイルが彼女を引っ張り出して解放してくれることを求め続けました。

  ゲイルは疲れていました。その夜の睡眠不足のせいばかりではなく、前にも一通りこれを経験していたからです。周期的に、ほとんど警告なく何かがダナに火をつけ、彼女は激しい感情に支配されるモードに囚われ、残りの人生もずっとそのままだと確信してしまうのです。彼女は全く制御不能で絶望的だと感じて――そして行動して――しまいます。ある瞬間にはゲイルの助けを嘆願します。それからゲイルを罵倒し、ゲイルがどのような種類の支援を与えようとしても、全然心配してくれないと責めるのでした。その後、彼女は深みに落ちていき、彼女の唯一の選択肢はすべてを終わりにすることだ――決して何も変わらないし、もうどうにも我慢できない――と言うのでした。

  もしあなたがBPDをもつ誰かを愛しているなら、このようにして障害が現れてくることにはとても慣れていることでしょう。感情調整不全はBPDの中核的な側面ですから。感情調整不全はBPDをもつ人の一定不変の常態ではありません。一定不変なのは感情的な脆弱性です。BPDをもつ人の大半は、相対的に感情が落ち着いた時期を経験します。しかしながら、しばしば感情の渦に巻き込まれ、そこに何日も、長ければ何週間もとどまってしまうかもしれません。そのサイクルが発生する理由を理解すれば、この主要なBPDの行動への対処が前より容易に思えるでしょう。

  ダナのケースでは、ゲイルは何が妹の奈落への旅をスタートさせたのか知りません。実際、ダナにもわかっていませんでした。けれども、一度彼女がその暗い穴に落ちると、彼女の感情はどうにも蓄積し続けていくように思われて、そうなるとダナは、何であれ最初に感情に火をつけたもののせいではなく、その感情を止める能力がないように感じるせいで、ますます動揺してしまうのです。

  私はこの現象を、渦巻き、あるいは流砂として考えます。それはあなたの愛する人を周期的に――たぶん、かなり頻繁に――罠にかけますが、その人の常態ではないからです。このレベルの情け容赦のない感情的な痛みは、実際のところ生き延びるのが難しいでしょう。大半は、時には効果的な行動により、時には調整不全な行動により、そして一番多いパターンとしては自己非承認に入り込むことにより、自分自身を渦から引き抜いて、許容可能な感情レベルに戻ります。

  BPDをもつ人は、一度渦巻きが回転を始めると、しばしば何が自分の感情に火をつけたのかわかりません。BPDをもつ人を捕らえて離さない感情と行動の複雑な連鎖を解明することは、資格をもつ専門家の仕事なのです。あなたは感情への刺激となり得るものをすべて封じようと不毛の努力をして、抜き足差し足で歩き回り、疲れ果てているかもしれませんが、それでも渦巻きはその口を開いて、あなたの愛する人を飲み込んでしまうのです。あなた方のどちらにも我慢できないほど頻繁に。良い知らせは、あなた自身のリアクションを変更すれば、愛する人の中で燃え盛る感情の炎を静められるということです。


次回は「感情の渦巻きの解剖学 ◇あなたの愛する人の経験」を紹介します。

「境界性パーソナリティー障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著



家族はどんな役割?

病気を正しく理解し、患者さんとのコミュニケーションに努めましょう。

統合失調症治療のベースとして、信頼できる人間関係や安心できる生活環境が重要です。家族や周囲の人たちの心身両面のサポートは大切です。まずは統合失調症という病気を理解し、家族が病気であることを受け入れましょう。そして、それを踏まえて、患者さんとのコミュニケーションや患者さんへのサポートを工夫しましょう。

病気の経過ごとの対応

【急性期】
陽性症状が強い時期。幻覚や妄想を病気だからと受け入れ、患者さんに寄り添う姿勢が大切です。
・興奮した患者さんを落ち着かせる
・病気の認識が乏しい患者さんを早めに病院に連れていく

【回復期】
陰性症状が強い消耗期。焦らずに患者さんの心のエネルギーの回復を待ちましょう。
・元気のない患者さんを休ませる
・元気のないときに励ましたり、どこかに誘ったりしない

【安定期】り
少しずつ元気が出てくる時期。リハビリをサポートし、社会への関心をさりげなく促しましょう。
・趣味などに興味をもつのをサポートする
・買い物や散歩などにつきあう


患者さんとの付き合い方のポイント
☆統合失調症という病気やそのつらさを理解する。
☆通院や服薬をフォローし、医師に普段の様子を伝える。
☆患者さんとの会話ではしっかり聞き、はっきり話す。困ったことは一緒に解決策を探す。
☆心配しすぎず、過保護や過干渉にならない。
☆感情的にぶつかったり、突き放したりしない。
☆再発の兆候がないか注意を払い、いつもと様子が違うときは医師に相談する


ご家族へのメッセージ
患者さんのサポートだけを考えるのではなく、ご自身の生活と人生も大切にしましょう。自分の生活を犠牲にして献身的に尽くすというやり方では長続きしませんし、患者さんも大きな心理的負担を感じます。ご自身の心身の健康を維持し、趣味や生きがいなどをもちましょう。また、家族がつらい思いで孤立しないように、家族会などで同じ立場の方々と交流し、情報交換するのもよいでしょう。


「統合失調症 患者さんとご家族の方へ」より



統合失調症 どんな心理社会的治療?

病気で低下した社会生活機能の回復を図る心理社会的治療 

心理社会的治療では主に精神療法とリハビリテーションが行われます。患者さんは病気によってさまざまな生活機能が低下し、「生活のしづらさ」(生活障害)を抱えています。心理社会的治療の目的は患者さんがこのような社会生活機能を回復し、社会でその人らしく生きられるようにすることです。



再発を防ぐために

統合失調症は再発しやすい病気です。治療を続けながら再発予防に取り組むことが大切です。

セルフケアのポイント
① 落ち着いた生活環境で過ごす
②運動や趣味など気分転換できる時間をつくる
③生活のリズムを整え、規則正しい毎日を送る
➃回復や社会復帰の遅れに対して、イライラしたり、焦ったりしない



主な心理社会的治療

【認知行動療法などの精神療法】
患者さんを精神的にバックアップするとともに、患者さんの考え方や行動の「くせ」を修正する

【心理教育】
患者さんや家族や積極的に治療に取り組んでいけるように、病気や薬についての理解を深める教育を行う

【SST〔生活技能訓練〕】
日常生活や対人関係に必要な技能を身につけるために、グループでロールプレイ(役割演技)などによる訓練を行う

【作業療法】
料理や木工、園芸などの軽作業を通じて、集中力、持続力や作業能力の回復を目指す

【デイケア】
社会復帰へ向けた「足慣らし」的施設。定期的に数時間滞在し、グループで作業療法やSST、レクリエーションなどを行う


次回は「家族はどんな役割?」を紹介します。

「統合失調症 患者さんとご家族の方へ」より




統合失調症 どんな薬?

〇抗精神病薬による症状の抑制を目的とした治療が中心です。

統合失調症になると、脳内で情報をやり取りする神経伝達物質のバランスが崩れることがわかっています。抗精神病薬は神経伝達物質を調節して、症状を緩和させます。幻覚や妄想などの陽性症状を抑制する定型抗精神病薬や、陽性症状に加え陰性症状や認知機能障害にも効果が期待できる否定型抗精神病薬などがあります。医師と相談しつつ、自分に合った薬を見つけることが大切です。

【主な抗精神病薬】
・定型   クロルプロマジン、レボメプロマジン、ハロペリドール
・非定型  リスペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリン、パリぺリドン、クエチアピン、オランザピン、クロザピン、アリピプラゾール

【抗精神病薬の副作用】
抗精神病薬にはほかの薬と同様に副作用がありますが、その現れ方には個人差があります。副作用が気になる場合は、医師と相談するようにし、自己判断で薬をやめないようにしてください。主な副作用には、眠気、だるさ、立ちくらみ、のどの渇き、便秘、体がスムーズに動かなくなる(錐体外路症状)、体重増加、血糖値の上昇などがあります。


〇回復と再発予防のために服用し続けることが大切です。

抗精神病薬は単剤を基本とし、少量からスタートして、効果と副作用を確認しながら必要に応じて増量し、患者さんにとって最適な投与量を決定します。効果が現れるまで一般的に2~4週間を要し、副作用が先に現れる場合もあります。
急性期は薬物療法が中心で、回復期以降は心理社会的治療と併用します。抗精神病薬には再発予防効果があります。再発を予防するため、症状がなくなっても服用を継続すること(維持療法)が重要です。

【薬を服用する際の注意点】
自分の判断でやめない
決められた服用時間や服用方法を守る
薬に関して気になることがあれば医師・薬剤師に相談する



次回は「統合失調症 どんな心理社会的治療?」を紹介します。

「統合失調症 患者さんとご家族の方へ」より



統合失調症 どんな治療?

〇統合失調症は適切な治療で回復することができる病気です。

統合失調症は適切な治療を受ければ回復に向かう病気です。早期診断・早期治療が早い回復につながるので、できるだけ早く受信することが大切です。
治療は通院を基本として、陽性症状が激しい場合など必要に応じて入院します。治療期間は一般的に長期にわたり、よくなったり、悪くなったりを繰り返します。治療の期間や経過には個人差があります。


〇統合失調症の症状の経過
前兆期~焦りや不安、不眠など発症の前兆となる症状が現れる時期
急性期~幻覚や妄想など陽性症状が強く現れる最も症状が重い時期・活動量多め
回復期~感情や意欲の低下など陰性症状が残るなか、徐々に回復に向かう時期・活動量少なめ
安定期~精神状態が安定し、周囲への関心や自発性が戻ってくる時期


〇薬物療法と心理社会的治療が治療の両輪です。

統合失調症の治療は、症状を抑える薬物療法と社会生活機能を回復させる心理社会的治療(精神療法やリハビリテーション)を組み合わせて行います。これによって、再発が予防できることもわかっています。また、これらの治療のベースとして、信頼できる人間関係や安心できる生活環境が重要です。


〇患者さんを支えるチーム医療
統合失調症の治療はリハビリテーションなどを含む総合的な内容となるので、多くの専門家が参加して、チーム医療で患者さんを支えます。患者さんの家族もこのチームの一員です。


次回は「統合失調症 どんな薬?」を紹介します。

「統合失調症 患者さんとご家族の方へ」より


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